ブラックラムズがいきなり『今夜テレビ通話出来ないか?』と言う連絡が来た。
何故テレビ通話?と思いつつもまあ夜ならいいかと思って応じたら、想定外の相談が来た。
「急で悪いが手話の練習が必要になったから付き合ってくれないか」
「手話?別にいいけど、俺もそんなに詳しくはないよ?」
俺と付き合いのあるスタッフさんでデフラグビー(聴覚障害者のラグビー)の選手がいて、基本的な挨拶やラグビーに関するものくらいなら覚えたのだが何故そんなことを知ってるんだか……。
「付き合って呉れそうな奴を探していたら、前にワイルドナイツが応援手話動画を作っていたのを思い出してな」
「ああ、前にインスタにあげたあの動画ね。でもなんで手話が必要に?」
「区の手話言語条例のPR動画を作る事になってな、あとで必要になる可能性もあるから挨拶程度は覚えておこうかと」
「なるほどね。でも俺も専門家じゃないし、参考文献とか動画送るぐらいしかできないけどいい?」
「ついでに練習に付き合って呉れると助かる」
俺も手話は本当に最低限だし、普段使う機会が少ないので復習にもなる。
夜に少し練習に付き合うぐらいなら何の問題もない。
「まあ、それぐらいならいいよ」
―5日後―
自らを指さしながら「私は」
左手で頭から耳の下あたりまでを撫で「ブラック」
耳の横を指でグルグルと渦を巻いて「ラムズ」
親指と人差し指を立てながら上に突き出して「東京、です」
「……うん、それで大丈夫だと思う」
開いた左手を左胸から右胸に移動させて大丈夫という手話で伝える。 表情でニュアンスが変わるけどブラックラムズには問題なく伝わるようだ。
「ありがとう」
左手の甲に向けて右手で手刀を切るのはありがとうの手話だ。
「じゃあ、またな」
ブラックラムズが手を振るとテレビ通話が途切れる。
ちょっと出来ることが増えると世界が広がる事を感じたブラックラムズの表情は、どこか楽しげだった。
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ワイルドナイツとブラックラムズ。
作中に出てきた野武士の手話動画は
これで 黒羊先輩の動画は
これ