会見用に整備されたイクスピアリの映画館の一番目立つ場所に、スーツを纏うレイドローが座っている。
それを配信用カメラに収めながら僕はその理知的な眼差しに期待を隠せずにいる。
(まさかスコットランドの英雄が初めて指揮するのがうちになるなんてねえ)
ニヤニヤしながらその姿を見つめていると、レイドローのヘッドコーチ就任が明かされたときの事を思い出す。
『すっかりレイドローはお前んとこの人になってもうたなあ』
電話越しに皮肉めいた一言をこぼすレッドハリケーンズに『はいはい』と僕が答える。
『せやからアッカーマンさんうちに返してくれん?』
『それはそっちで交渉してくださいよ、まあうちのアドバイザーやりながらヘッドコーチは無理でしょうけど』
『お前が連れてったんやろ』
ぶすくれながらライナーズが言い捨てる。
再編の時にハリケーンズの時に実績を上げてたアッカーマンさんがうちに来てくれて昇格まで漕ぎ着けたのは事実だが、そんな誘拐したかのような言い回しはやめて欲しい。
『そもそも全ては親の意向でしょうに』
『ならもっと早よ上にあがれんかったんか?』
そこを突かれると言い返せないのがつらいが、それはしょうがない部分もある。
まあウダウダ言っても結局僕は昇格した。その事実が消えることはない。
『ならそっちも昇格してD1でコテンパンに打ち倒してみなさいよ』
『……絶対D1あがってお前をボコボコにしたるわ』
『せいぜい楽しみにしてますよ』
殺意強めなレッドハリケーンズとの電話を切ればレイドロー来日の予定についての連絡が来ていた。
来日の日に丸をつけた後、最初のプレシーズンマッチの予定日までの日数を数えればあっという間のような心地がする。
「早く試合したいですねえ」
ようやく、僕らの季節が来る。
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Dロックスの話。
ずっとレイドローとトンプソンルークがごっちゃになってたことにこれを書いてる途中で気づきました。