熊谷駅に一歩降り立つとまだ夏の気配がそこらじゅうに残っていた。
「あっつ」
電車内が涼しかった分外の暑さが身に染みてくるのだ。
スタジアム行きのシャトルバスの乗り口を探して歩いていると、見覚えのある男女が自販機の前で揉めてるのが見えた。
「……スティーラーズ?」
「あ、キューデンさんや。いま小銭あったりします?」
「あるけどなに?」
「いや飲みもん買おうと思ったらちょうど100円玉だけ無うて」
「ほんなら100円玉2枚あれば足りる?」
それくらいならという気持ちで100円玉を渡すと「助かります」と答えてくれる。
残りの小銭でジュースを2本買って、そのうちの1本を女性へと手渡すと勢いよく半分近く飲み干した。
「九州電力さんのとこの子よね?」
「はい。えっと……」
「神戸製鋼よ、今回は助かったわ。あなたもラグビー見に来たの?」
「ええ。うちの選手が試合前のイベント呼ばれたんでその手伝いですね」
本当はまだ行ったことのない熊谷のスタジアムに行って試合を見に行きたかっただけである事は伏せておく。
「そこは私も同じよ。会場着いたらお礼に何か奢らせて貰える?」
「別に200円くらい気にせんでも良いんですけどね」
「年上の気遣いは素直に受け取るものよ。まさか明治より前に生まれたって事はないでしょ?」
「……ほんなら、試合の話しながら行きましょ」
今回は遠方での1人観戦。付き合ってくれる人がいるに越した事はないのだ。
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キューデン先輩とこべるこ親子。マスコットさんが熊谷行ってたのを見て思いついたネタでした。