「たこまん連れてってくりん」
「……ハア」
試合後のどこか暗い気持ちを隠しながらシャトルズさんの所へ挨拶に行くと、そんな無茶振りが来た。
「看板見てたら気になってのん、アザレアに聞いたら美味しいよって言ってたで食べまいか」
「あざれあもおかし食べたい!」
今回も裏方さんのお手伝いで連れてきていたアザレアもすっかりその気になっていて、スタッフに目配せするとどうぞどうぞと頷いた。
「アザレア、お菓子は一日?」「いっこまでー!」
「ちゃんと守れるならアザレアも連れて行きますよ」
「うん!」
***
車で10分弱のところにあるたこまんはこの辺りではお馴染みのお菓子屋さんだ。
地域のラグビー協会スポンサーとして今回お世話になったし、シャトルズさんもヴェルブリッツさんへのお土産にはちょうどいいのだろう。
「タコのお菓子はありゃーせんな」
「そういうもんですよ、お土産なら大砂丘とか良いんじゃないですか?」
「色々あるでのん、アザレアはどうするだん?」
「パフェにするー!」
一瞬首をかしげると、そう言えばここはカフェも併設されていたことを思い出す。
併設のカフェで出されているメニューには確かにクラウンメロンのパフェが紹介されている。
「このクラウンメロンのパフェですか?食べ切れます?」
「うん!」
ちょっと量が心配だが最悪残りは僕が食べればいいかと割り切る事にする。高いのはご愛敬だ。
僕のほうは大砂丘とコーヒー、シャトルズさんはお土産のお菓子とは別に二種類のマリトッツォを注文してくる。
「しゃとるずのおにーさんも甘いのすき?」
「こんきい時の甘いもんは好きだあ」
わいわいと話を弾ませる二人の横で僕だけがどうにも苦い気持ちが残る。
初めての船出の試合で三部リーグであるシャトルズさんにボコボコに負けるという失態。
(これで有観客だったら本当に恥ずかしさで死にたくなるな)
苦い気持ちはぬぐえない。けれどこれからも日々は続く。
失態は早く切り替えたほうが良いのは分かっててもなんでだかうまくいかない。
「お待たせしました。コーヒーふたつとミルクティー、大砂丘とマンゴーマリトッツォとマスカットマリトッツォ、クラウンメロンパフェでございます」
ミルクティーはアザレアが選んだ。砂糖を入れればアザレアも飲める味になるし、何より本人も大人気分になれるようでよく注文している。
するとアザレアが「ねえ、」と声をかけてきた。
「メロンひと切れあげるから元気出して」
「アザレア……ありがとう」
せっかくなのでそのメロンをひと切れ受け取ると温かい気持ちになる。
アザレア、控えめに言って天使なのかもしれない。
「ちんびいにいい子じゃんね。レヴズ、俺のもおもやいっこしまいか?」
「おもやいっこって何ですか?」
「分けっこ」
「それは大丈夫です」「うん」
そう言いながらさっそくマンゴーのマリトッツォにかぶりついて「美味い」とつぶやく。
頬には思い切りマンゴークリームがべったりついていて、それが妙におかしくてつい笑ってしまう。
「早く食べりん」
「そうですね」
かじりついた大砂丘はふわふわで甘くほんのり秋の味がした。
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ブルーレヴズとシャトルズとアザレア。
三河弁わかんないのでミスがあればこそっと教えてください。