今年は特別ですから、という職員の気遣いで仕事を早めに切り上げて家に戻ると「お帰り」と周南が笑顔で出迎えてくれた。
「ただいま」
周南が仕事納めの後にうちへきてくれるのは毎年恒例だが、今年は平成最後の年越しであり日新製鋼と言う名で過ごす最後の年越しである。
だからかほんの少しいつもと気分が違うように思えた。
「お風呂沸かしてあるから温まっておいで、その間に年越しそば仕上げとくから」
年の瀬の多忙さで出来なくなりがちな家のことを代わりにこなしてくれる周南に心からの「助かります」を告げると「いいんだよ」と返してくる。
(……周南には助けられてばかりだな)
ちゃんと大切にしてあげたいといつも思うけれど、助けられてばかりでこういう時は自分の至らなさを思い知る。
風呂で体を清めて茶の間に戻るとそこには大きなかき揚げの乗ったそばがどんと鎮座していた。
「周南、今年もありがとう」
「どういたしまして。そば早く食べよう」
いただきますと年越しそばに手を合わせながら、今年も二人でいられた幸福を祝うのだ。
年の瀬の呉周南