式典が終わってふと思ったのは「いいものたべたい」だった。
今頃鹿島や君津くんなんかは大慌てだろうけどこっちは雨一粒も降りそうにない青天で、なんかそう言う気分になったのだ。
「という訳で八幡さんお寿司奢ってください」
「……そう言うのは旧住金組の和歌山の役回りじゃないんですか?」
「一応和歌山俺より年下なんで」
きょうの式典には和歌山と八幡さんが来てたけど、こういうのは最年長にたかるべきという判断である。
和歌山が申し訳なさそうにすいませんと小声で詫びてくるけれど、和歌山は別に詫びなくていいと思う。此花もたぶん居たらこういうと思うし。
「というか、もうさっき予約取っちゃったんですよね。摂津本山の生粋」
「待って尼崎待って!あそこ一人で一万五千円ぐらいするよね?!」
それを聞いた八幡さんが膝から崩れ落ちた。
此花がここにいたら間違いなく大爆笑だった(ついでにケーキも買って貰えって言うと思う)ろうに、と思うけどまあいいだろう。
「八幡さん、無理なら俺も少し出しますよ?」
「和歌山こういう時ぐらい奢って貰うべきだと思うよ?だってこの間の鹿島のカチコミも、此花が荒れた夜も、和歌山が堺の面倒見てるのも全部八幡さんのせいだし」
「いやそこまでは「わかりました」
八幡さんがはーっと深く長い溜息を洩らしてから、宣言する。
「気の済むまで好きなだけ食べればいいでしょう」
俺がほらね?と和歌山に笑えば、何とも言えない面持ちをしていた。
これくらいの暴挙があったとしてもいいだろう。だって俺、きょうで100歳なんだから。
尼崎と八幡と和歌山
旧住金推しとしては八幡もたまには痛い目見てもいいと思う。