残暑の残るドラックストアの隅に割引になった花火が積まれていて、それに何となく手を延ばした。
「で、あなたたちを呼んだんですよ」
筑西と桜川がきゃあきゃあと声をあげながら花火が火を噴くさまを楽しむ横で、結城は折りたたみいすに腰かけたままつぶやいた。
「……普通に小山の花火見に行きゃいいだろ」
「それはそれ、これはこれです」
下館もおそらく同じことを思い出してるのだろう。
「もうここで花火は見られないと思ってたんだがな」
少し前まで筑西市川島地区には小さな花火大会があった。
とはいっても近隣の住人しか来ないようなかなり小規模なものだ。
小規模ではあったが大会の日には、空き地に屋台が並び河川敷には花火を見に来る人が集まる近隣の風物詩であった。
その花火大会も鬼怒川の堤防工事と来客数の減少を理由に終了となり、もうこの夜空に花火は咲くことがなくなってしまった。
「花火のない夏ってのはどうも寂しくていけないな」
「小貝川の花火もあるくせに」
「それはそれだよ」
筑西と桜川の見ていた花火の火の勢いが少しづつ消えていく。
「新しいのつけてー!」
「はいはい」
過去は川の流れのように遠ざかる。
新しい時代が積み重なれば遠くなっていくものを、私たちはひそかに記憶し続けている。
いつかの夏の結城+下館。
今年は花火大会が軒並み中止になって寂しいですね。