まだ朝早い午前五時過ぎの母子島遊水池にはちらちらと人出があった。
「……さっむ」
ぼやきつつも筑西を折りたたみ椅子に座らせて、持って来た熱いお茶を飲む。
「下館市さん」
声をかけてきたのは顔見知りのオヤジだ。
その手元には立派なカメラがぶら下がっており、なるほど相当気合を入れてきたらしい。
「筑西市さんも連れて来たんですか?」
「いちおうな」
そう言えばと思い出して鞄から紙袋を一つ取り出す。
「焼き栗食うか?」
「いただきます」
笠間から貰った栗を昨晩火にかけておいたのだがこれがなかなか美味いのである。
腐っても栗の名産地とでも言おうか。味も良い。
くだらない話をするうちに空が明るくなって来たので、顔見知りのオヤジは隣で三脚を組み立て始める。
(そろそろだな)
隣で眠っている筑西を揺り起こし、スマートフォンのカメラを準備しておく。
「筑西、」
「ふぁい?」
「お茶でも飲んどけ」
目覚めのお茶を一口飲ませれば眼が冴えたらしく、目がしゃっきりしている。
だんだんと朝焼けのオレンジが遊水地の上空に覆いかぶさっていく。
「筑西、もう少しだ」
朝の寒さに白む息の奥で、筑波峰の上にオレンジの火の玉がポンと乗っかっていく。
ダイヤモンド筑波がそこに完成する。
そして目の前の池も、波ひとつ立てずにその姿を鏡のように映している。
「……きれいです」
「だろ?」
まったく、朝早くから起きた甲斐があるというものだ。
下館と筑西。
この間ついったの公式垢が自慢げに動画上げてたのでつい。