あわらさんからカニを頂いた。
曰く加工中に足がもげてしまった売り物にならない奴なのだそうだが、以前『傷ものでもいいからカニ贈ってください』と冗談交じりに言ったのを覚えてくれていたらしい。
茹でて冷凍されたカニなのでとりあえず解凍するところから始めよう。
同封された達筆なメモ(手紙によると三国さんが書いたらしい)によれば、冷凍カニは一日かけて冷蔵庫で解凍するのが美味しいらしい。
(……という事は今日は食べられないのか)
しょうがないと思いながらとりあえず今日はイオンのレストラン街で夕飯を済ませることにした。
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翌日、夜。
解凍されたカニを冷蔵庫から取り出し、まずは殻をむいてそのまま食べてみる。
「……美味しい!」
ぷりぷりのカニの身とエキスが口に広がってそのまますとんと落ちていく。
作っておいたぬるめの日本酒を流し込むと、本当に幸せな心地になる。
携帯が軽やかな着信音を奏でて来るので確認すればつくばさんだ。
『下妻、夕飯一緒に食べない?』
「いま貰い物のカニで晩酌中なんで無理ですかね」
『えっ』
「今夜は一人でゆっくりさせてください」
不満そうに了承の言葉を述べてから電話が切れる。
みんなでワイワイするのも嫌いじゃないけれど、やっぱり一人でのんびりしてるのはいいものだ。