忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

心音の向こう側

恋に落ちる音と言うものが本当にあるのなら、きっとあの時鳴り響いたのだ。
「よろしくな、輪西」
手を伸ばして微笑んだ釜石の瞳は黒々と美しい輝きを湛えていた。
初めて出会った仲間はこんなにも美しい存在だったのだと思うと涙さえ出てきそうで、手を伸ばしてグッと握り返す。
「……よろしく!」
あの日からずっとあの姿に恋をしている。

心音の向こう側

「釜石、」
「うん?」
あの日から100年以上の月日が過ぎ、戦争も混乱も成長も遠ざかっていった。
だと言うのにその瞳の上質な石炭のような輝きは一つも失われずそこにあり続けていた。
ビルだらけの東京は冬の冷たい雨に打ち付けられ、ビルと同化した空は部屋の中にいても圧迫感があった。
「100年なんてあっという間だねえ」
「おう、そうじゃな」
「……八幡と、付き合ってるの?」
「藪から棒にどうした」
「前から聞きたかったから」
八幡が釜石に師弟愛以上のものを抱いていることは知っていた。
そしてそれが叶わなければいいと思い、この恋を叶えたいと思っている八幡の姿を恨んでいたすらいたくらいだ。
釜石と僕はただの友人でしかなく、それ以上になる事が出来ないことをこの100年以上の付き合いで悟っていたから余計に。

「付き合わんよ」

釜石がさらりと告げるので、僕は喜色を抑えた声色で「そうなんだ」と答える。
「神様に恋は出来んからな」
そう思うだろう?と言う目でこちらを見てくる。
ああまったく、君は罪深いね。
「どうだろうね」
100年の恋の心音はゆっくり死へ向かっていた。




恋を拗らせた室蘭と誰にも恋にしない釜石の話。

拍手

PR

たぶん今日はこういう会話してた

八幡「東福岡優勝しましたね」
釜石「優勝は東海大仰星じゃろ?」
八幡「いやなんでそこで東海大仰星なんですか」
釜石「いやだって高校ラグビー見とったんじゃろ?」
八幡「私高校サッカー見てたんですけど」
釜石「えっ……高校ラグビー見て『この子うち来ないかな』とか思わんのか?」
八幡「その理屈だと男子バレーや高校野球見ても同じこと考えますよね?」
釜石「ほうじゃな……」
八幡「でしょう?」



その頃の神戸
神戸「男子高校生の筋肉はいいものですわね……」
加古川「気持ちは分かるけど仕事しないと……」


半分ぐらいついったで呟いたネタです。

拍手

僕らが三人だったころ

釜石のうちには古い炬燵がある。
100年近く現役のそれは壊れては修理し、時々新しい布団に変えたりしながらも未だに釜石の家で現役で使われている。
「いい感じに寒くなってよかったな」
「ここのところ暖冬でしたしね、鍋日和が無くて寂しいくらいでしたし」
「室蘭のとこだと暖冬でも関係ないじゃろ?」
「そうでもないよ?身体が寒さに慣れてる分調子が出ないくらい」
八幡のお手製ポン酢のたっぷり入ったとんすいに白菜ともやしと鶏肉を突っ込んで、思い切りほおばれば野菜の甘みと鶏の油が最高に美味しい。
「でもこの三人で食べるのも久しぶりですね」
「あー……言われてみればそうじゃな。日鐵時代はよくあったのにな」
八幡と釜石の言葉で、最後に三人で食べたのはいつだったかとぼんやり思い出す。

最初に3人で食べた日は覚えている。
日鐵という組織が生まれた少し後、たしか2月頃だっただろうか。
『ちょっくら築地まで散歩しとったらいきのいいタラを見つけたんで買ったんじゃが、みんなで鍋でも食わんか』
『あなたが作ってくれるのなら』
『言い出しっぺがやらんでどうする、野菜も買ってある。輪西も手伝ってくれるか?』
『もちろん!』
あの時は、八幡と釜石が楽しそうに笑いながらタラと野菜の鍋を作って食べたんだった。
それ以上のことあまり覚えていないけれど、あの時が確か三人で一緒に食事をした最初の日だった。
それぞれてんでばらばらのところに暮らしているからあの頃は三人で食事するのは東京に滞在する数週間の間くらいで、それがいつも少しだけ楽しみだった。

「……なんか、昔より一緒にご飯食べる機会増えてない?」
「そりゃそうじゃろ」
「いまうちの身内何人いると思ってるんだか……」
あれから長い月日を経て僕らにはたくさんの仲間ができた。そして身内が一人増えるたびにお祝いをし、全員が集まるたびに皆でごはんを食べた。
記念日が増えればこうして顔を合わせる機会も増えた。
(そっか、そういう事か)
「まあ飯はみんなで食う方が寂しくないからな」
釜石が嬉しそうに笑う。
「それもそうだね」





私の中でこの三人が熱いのでよく書いています。
日鐵時代とか官営八幡時代とか書きたいんですがまだ脳内処理が追いつかないので書けたら書きます。
あと製鉄所擬人化のタイトル決まりました(謎のお知らせ)

拍手

たこやきたべたい

ひたちなかには忙しい時期が3つある。
1つ目はネモフィラが盛りを迎えるゴールデンウィーク、2つ目は海水浴客とロックインジャパンフェスの対応に追われる8月、そして3つ目が年末用のタコの加工が最盛期を迎える12月。
「……だって言うのになんで呼ぶんですか」
「だってたこ焼き食べたくてさ」
水戸の自宅ではなぜか日立に大洗に茨城町に笠間と桜川と県央が大集結していた。
「大洗は五十鈴殿の生誕祭サボっていいんですか」
「大丈夫、ちゃんと準備はしておいた」
じっと桜川がこっち見てくる、と言うか桜川は県西なのになぜ来た。
「おっじゃましまーす!お腹空いた!」
「城里、お前チャリで来たのか」
「そうだよー、笠間さんも運動したら?」
ものすごいいい笑顔でやってきた城里は早速冷蔵庫から何か取り出してきてる。
ああダメだこりゃ。
溜息を吐きながら結局タコをさばいてたこ焼きを作るしかないと悟るのだった。





昨日のひるブラがひたちなかのタコだったのでつい。

拍手

クリスマスソング

まだ11月のはずなのに早くもクリスマスと正月の話をし始める気の早い街並みを歩きながら、ガシガシと頭をかく。
仕事で東京に出張に来たら同じ製鉄所なんだしいいだろと予算の都合で和歌山と海南と同じ部屋に突っ込まれ、居心地の悪い部屋を出て行ったはいいが気の早いクリスマスイルミネーションの下で一人というのもやはり浮いている気がした。
どっかで酒でも飲んで一晩やり過ごしたいが土地勘のない東京では動きようもなく、結局当てもなくふらふらと歩くしかなかった。
「うげ」
「……君津かいな」
イルミネーションの青い光を反射した金髪は昼間会った時よりも随分と切り落とされてさっぱりした君津の彼女と同じ色の瞳には驚きの色が浮かんでいた。
好きでも無いが嫌いでもない、しかし彼女の名残りを探したくなる。君津とはそういう男だった。
「なんでこんなとこに……」
「別にええやろ、というかそっちこそなんで」
「髪切ってもらってた、練習台になるとタダで切ってもらえんだよ」
「ふうん、なら金余っとんのやろ?今晩飲ませてぇや」
「断る」
「なんでぇ」
「……あんたの俺から別人を見ようとする目は嫌いだ」
それに奢る義理ねえし、と君津は言い切る。
やっぱり、この男は彼女じゃない。
彼女の残り香を帯びながらも違う存在だ。
「あと、この先の3つ目の信号右折して100メートルんとこに安くてうまいバルがあっからそこで飲んでろ。酔いつぶれたら泊めてくれるし」
そう言ってさっさとどっかへ行く君津の背中を見送る。
……ああくそ、今ちょっとグッと来た。




君津と堺のめんどくさい関係が好きです。堺の言う「彼女」についてはおいおい。

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ