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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

じめじめ日曜日と恋人

鈴鹿での大会に合わせてヒート君の家に泊まりに来たが、結局何も起きずに朝を迎えた。
ふたりでブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦を見ながらずーっとお喋りしていたせいで、試合が終わった時にはもう午前二時前。
正直まだ眠くて仕方ないけれど、今日も試合があるから寝ているわけにもいかない。
「……パールズ」
「おはよう」
まだ寝ぼけ気味のヒート君が私を見て「冷蔵庫に朝ごはんあるから食べてって~」と寝ぼけた声で告げてくる。
「ありがとう、おやすみ」
寝室を出て冷蔵庫を開ければおにぎりの乗ったお皿や片手鍋に入ったお味噌汁に野菜入り卵焼きが出てくる。
お味噌汁はひとり分だけお椀に入れてレンジで温め、その間に天気予報をチェックする。
昨日からのじめじめは今日も続くようだけれど雨は降らないらしい。
チンしたい味噌汁におにぎりと卵焼きを合わせれば十分な朝食だ。
昨晩も得意料理だというカレーうどんに半熟卵を乗せてくれて、あれも美味しかったなあ。

「……今日も頑張ろ」

今日はホームゲームだし、あとでヒート君も見てくれるはずだ。頑張らなくちゃ、ね。


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パールズとヒート

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梅雨空にきみは孵る

新しい名前の書かれた企業登記簿に刻まれた新しい名前をもう一度見つめながら、これが今日からの新しい自分の名前なのだと思うとなんだか妙な気分になる。
自分を指す名詞であるはずなのにまるで新しい兄弟の名前みたいにきらめいている。
「ジュビロ……だよな?」
「ヴェルブリッツさんとシャトルズさん」
ドアから距離を取って僕を見てきたのはヴェルブリッツさんとシャトルズさんだった。
「今日からはジュビロじゃなくてブルーレヴズですけどね。静岡ブルーレ・ヴ・ズ、です」
レヴズという難しい発音部分を強調して告げると「きんにょ(昨日)と別人みたいだがや」とシャトルズさんが呟いた。
昨日からわざわざうちに来て事務作業の手伝いを手伝ってくれていたヴェルブリッツさんとシャトルズさんから見ても、この新しい姿は異質なようだった。
「正直僕も起きたらこれでびっくりしたんですけどね」
「急に変わるもんなんだな、昨日までこんなに髪の毛真っ青じゃなかったし肌も浅黒くはなかったろ」
指摘された通り、僕の髪の毛はずいぶん真っ青になった。
海や空のような原色のブルーに根元だけが雪が降ったように白くなった。いわゆるプリンヘアーのような感じだ。
肌だって以前よりも焼けた浅黒い感じになって、目前のふたりと比較して自分のほうが色黒になったのが分かる。
「目の色も青くなっとるに」
「あ、そうですか?鏡見たときは気づかなかったです」
「……いち企業になるって言うとずいぶん変わるもんだな。ワイルドナイツやシーウェイブスの時とは段違いの変わり方でびっくりした」
「僕もまさかここまで変わるとは思ってなくてびっくりしましたけどね。でも新しく出来たのもあるんですよ」
右側の半袖のシャツを肩までめくりあげると脇から肘までタトゥーが刻まれている。
直線で構成されたトライバルタトゥーと自社の音叉マークを組み合わせた独特のデザインの大きなタトゥーには正直まだ困惑しているところだ。
「このパターンは初めて見たな、サモアンタトゥーに自社のマークを組み合わせてるのか」
「たぶん、そうですね。詳しくないので何とも言えないですけど」
こうしたタトゥーの入るパターンは見たことが無いのでいちおう親にも相談したが『自然に出たのなら仕方ないんじゃないのか?』という反応だった。
「これだけはちょっと扱いかねるとこなんですよねえ」
「……別に気にすることじゃないだら」
シャトルズさんは僕のタトゥーに手を伸ばして告げる。
「どこん国でもタトゥーは成人した男の象徴だに、それにおまんのことはみんな知っとるで、おうじょうこく奴はおっても離れる奴はおらんに」
濃厚な三河弁ではあるけれど気にするなという意志だけは伝わってきた。
「これも大人になった証拠なんですかね」
「だな。でもたぶん変わりすぎてビビる奴続出すると思うから写真だけ関係者LINEにあげとけよ」




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ジュビロ改めブルーレヴズさんとヴェルブリッツとシャトルズ。

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残りの日々を数えて

最近退職願や異動届の書類を扱う事が増えて、ああもうすぐ僕はいなくなるのだなあと思う事が増えた。
その寂しさに慣れていくしかないのだろうと分かっていても無性に寂しくなってしまう。
何となく飲みたくなって貰い物のジンを炭酸水で割る。
今までお世話になったからと言って渡してくれた関連会社の社長の顔を思い出すと泣けてきてしまい、慣れない風味の酒を無理やり流し込んだ。
「呉、生きてる?」
突然玄関のほうから広畑さんの声がして「生きてますよ」と返す。
そういえば昼間暑かったから玄関を開け放して風が通るようにしていたんだった。
「せっかく呉の所に来たのに今日早番でいない言うから家まで来ちゃったんだけど、あがって大丈夫?」
「どうぞ」
周南もいないひとりきりの夜だ。
広畑さんは夕飯のついでに買ったというコンビニのケーキセットを持ってきていた。
「ケーキですか」
「デザートに買って来たんだ、ショートケーキとチョコケーキどっちがいい?」
「どっちでもいいですよ」
「じゃあショートケーキで。お酒も付き合おうか」
「……ジンって飲んだことあります?」
「あんまり。でもまあジュースで割れば行けるでしょ」
広畑さんは買って来ていた数本のジュースから何が良いかとスマホで調べて、オレンジジュースとジンを混ぜて飲むと「うん」とつぶやいた。
「これなら思ったより行ける」
「一口貰っても?」
試しに受け取って見らば確かに思ったよりもジンの癖が和らいで飲みやすい。
こちらのほうがケーキにはあうかもしれないなと納得して「次からはオレンジで割ってみます」と告げる。
幸か不幸かまだ口を開けたばかりのジンはたっぷり残っているから次の機会に試そう。
「呉、またこっちに来る機会があったら一緒に呑もう」
「……僕で良ければ喜んで」

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呉と広畑

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この夏はイメチェンしたい!

『チーム名称も変わるんでせっかくだし少し髪形とか変えてみようかと思ってるんですよね』
いつものメンツでオンラインで話しつつ作業していると、ぼそっとそんなことを言う。
『イメチェン?アフロ良いんじゃない?』
『完全にあなたのとこの選手リスペクトになるじゃないですか、それにアフロの会社員はちょっと……レットハリケーンズに馬鹿にされそうなんで』
『レッドハリケーンズと喧嘩なんていつもの事じゃん』
『あれを何回東京湾の藻屑にしようかと思った事か』
レッドハリケーンズへの愚痴がものすごい勢いでシャイニングアークスの口から出てくる。
(馬が全く合わない身内がいるって大変なんだな)
俺もそんなに兄と仲悪いわけでもないけど顔を合わせるたびに喧嘩するような相手が身内だと逃げられないんだなあ、という気持ちになる。
「イメチェンの話だけどさぁ、」
『スピアーズいい案でもあるんですか?』
「このタイミングで名前変える人結構いるだろうし、別に変えなくても良いんじゃない?」
「ワイルドナイツとか他メンツも名前変わりますしね。まあ全面的に変わるわけじゃないですしイメチェンはー……」
『あ、このミラクルセブンもちょっと名前伸びるよ』
「『突然の告知?!』」
思わず作業の手を止めて二人分の声が見事にかぶったけれど、グリーンロケッツは何事もないように話を続けてくる。
『いや言うの忘れてたなって、まあ今までの名前に東葛がつくだけだけどねー』
「いや東葛って船橋も込みじゃん!」
『しれっと浦安も含めないでくださいよ!』
『船橋と浦安は南葛じゃん!ミラクルセブンは我孫子だもん!』
「そうだけど誤解されるし我孫子か天王台で良かったじゃん!」
『近隣でも活動するから東葛のほうが都合がいいの!』
作業の手を止めてぎゃんぎゃんと喧嘩が始まる。
言いたいことを言い合ってから、ふと全員が気づく。
「そういやこれシャイニングアークスのイメチェンの話だったね、新しい名前なんだっけ?」
『シャイニングアークス東京ベイ浦安ですね』
『長くいしマンションっぽい名前……』
『名前が長いのは私のアイデンティティの一部なんですよ』
「そんなアイデンティティ聞いたことないけど」
ハハッと苦笑いしながら麦茶を飲んでぼんやりと天井を見上げる。
グリーンロケッツとシャイニングアークスのくだらない話を聞いてるとなんか平和だなと気づく。
レッドスパークスみたいに死を選ばされたり、ジュビロみたいに新しい環境に飛び込むからと多忙になることも無く、こうしてくいい友達でいられる。

「……新リーグになってもこうやってくだらない話できる関係でいたいな」

誰に言うでもない独り言はそっとどこかへ吸い込まれた。

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スピアーズとグリーンロケッツとシャイニングアークス

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未来で逢えたら

『結局サンウルフズっていいチームだったよな』
サンゴリアスが何杯目かのジンソーダを空にしてそんなことをつぶやく。
オンラインで酒を酌み交わしながらの飲み会は、試合から3時間もするとログアウトや寝落ちですっかり落ち着いていた。
『ホンマ、愛されとる感じしたもんな』
スティーラーズ先輩がほろ酔い気味にそう呟きながらつぶやいた。
『活動休止から2年も過ぎれば人間忘れとるもんなのに、客席が写ると一人二人必ずあのグッツを持ってる客がおって……あんな風に大事にされてるってええよな』
『だとしても今回は特例に近い復活だろう』
その声で寝落ちしていたはずのブラックラムズさんが起きてきていることに気づいた。
『ブラックラムズ起きとったん?』
『先程転寝から起きたところだ、斯様に愛されていても戻れない者は戻れぬ。スティーラーズが一番良く知って居る事だろう』
『……せやけどな。けどあれはあれで俺らの一つの理想やと思わん?非業の死を迎えようとも愛され、その名を記憶にとどめ続ける存在ってのは』
『死なないに越したことはないけどね』
サンゴリアスがぽつりとつぶやいて『俺も色々考えなきゃなあ』と上を見上げた。
新しいリーグでどのようにふるまうか、競技のプロ化という流れの中で自らはどこに生きる道を見出すか、考えることはいくらでもある。
「まだ焦る事じゃないよ、サンゴリアス」
貰い物の檸檬堂を開けながら俺の失ったものが頭の隅に浮かんでは消えていく
数々の失ったものや手放さざるを得なかったものたちのことを、忘れたことは一度たりともない。そうさせた人への恨みも、またしかり。
「俺たちが死すれどもラグビーは死なないんだから」
『死ぬ前提で物を言うなや』
間髪をおかずにスティーラーズ先輩がツッコミを入れてくる。
『汝は一度死んだ心算で居るのだろうが、我らは死人と話せる力を得た事は無いぞ』
『……そうだよ、お前に死なれたら俺が退屈で困る』
三人からのそれぞれの言葉は優しい。
『それにまたなんかの折にフラッと復活してくれるだろ』
サンゴリアスは前向きに笑いながら新しく開けた缶ビールを見せてきた。
『信じようぜ、次の未来を』
「お前がそう言うならそうする」
画面越しに小さな乾杯をするとスティーラーズ先輩が『バッファロー(※)』とつぶやいた。




※:ラグビー界の儀礼で右手で酒を飲んではいけないので気づいたらバッファローと言って指摘し、言われたら持ってる酒を一気に飲み干すというルールがある
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ワイルドナイツとサンゴリアスとブラックラムズとスティーラーズ。
サンウルフズまたひょっこり復活してほしいですね。

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