あわらの温泉に入りたい気分だったから、と告げて我が家にやってきた福井を私はあらあらと言う面持ちで迎え入れることにした。
ソファーに身体を横たえて冷たいクーラーの風に当たる間にお湯を沸かす。こういう時自宅に源泉を引いておいたのは正解だったなと思う。
「あわら、」
「はいはい?」
「……結城さんからお中元が届いたのだけれど、どうしたらいいだろう」
ここからはるか遠い北関東の地にある彼女の想い人の名を聞けばなるほどと言う気持ちになる。
家に来たのは相談のためなのだろう。
「羽二重でも贈ってみるのはどうですか?」
「去年のお歳暮に贈った」
「じゃあ……越のルビーのゼリーは?」
がばりと起き上がると、その手があったかと言う顔でこちらを見てくる。
つくづくうちの県庁所在地様は素直な子でありがたいと思う。
「ああ、お風呂が沸きましたね。夕飯も食べていきます?」
「邪魔にならない?」
「今日は三国も金津も不在ですから」
今日は女二人でいろいろ話しましょう、と告げれば彼女はこくりと頷いた。
せっかく福井嶺北組を独立させたのであわらと福井の話。