ぷらいべったー再録。
うちよそカプ詰め合わせ、カプと一緒にお借りしたキャラの親御さんの名前も明記してあります。
(なとりで/照々さん)
「新しい着物、仕立てたんですよ」
「うん」
遠方に住む恋人のもとへの久しぶりの訪問のため、常磐線を乗り継いで東北の地に足を踏み入れた。
北国と言えど夏の盛りの明るい陽射しはアスファルトを熱して体感気温をあげてくる。
夏用の白い麻の着物でキャリーを引きながら名取の家へと向かうのはもう何度目の事だろう。
「それで、名取のものも仕立ててもらったんです」
「……えっ?」
「同じ麻の、夏用の着物。キャリーケースの中に入れてあるんで後で着て貰えませんか?」
「取手が私のために?」
「ええ、あなたには白が似合うと思って」
恋人と揃いの着物で過ごしたい、なんて気恥ずかしい願いを彼女は「いいよ」と受け入れた。
(にばらき/イチマルさん)
夏休みシーズンのユニバーサルスタジオジャパンは混雑と熱気にあふれている。
人ごみの中ではぐれないようにと手を繋ぎながらのんびりと歩いていく。
「やっぱりすごいですねえ」
「ほんとに……でも、まちさんがこういうとこ好きなんは意外でした」
「好きっていうか、楽しそうにしてる人を見るのは好きなんです。しーさんはお嫌いですか」
まちさん・しーさんという呼び方はお互い同じ『いばらき』だから市と町という行政区分の違いからついた愛称のようなもので、そう呼んでくれるのは世界でこの目の前にいる人だけだった。
「……いや、まちさんが楽しいんならええんですけどせっかくならアトラクション乗りたいとか、そう言うのは無いんやろかと思って」
「遊園地でいう事じゃないですけど、激しい乗り物あんまり得意じゃなくて」
「気持ちはちょっとわかります。」
彼が苦笑いと共に同意してくれるけれど、本当はただこの炎天下のお祭り気分の中を歩いて話をしているだけで十分楽しいなんて言うのは私に付き合わせてるのに言うのは失礼な気がした。
(色麻牛久/おはしょりさん)
「あー……」
流れるプールでぷかぷかと水に流されながらいかにも夏という景色を眺めていた。
そう言えば流れるプールなんていつぶりだろう、と特に意味もない事を考えながら隣にいる色麻の方を見たらなぜか潜水していたようでぷはっと水面から顔を出してきた。
「牛久、楽しくない?」
「……流れるプールで潜水してるとは思わなかった」
色麻の真っ白な肌が夏の日差しの中では輝いて見える。
ああやっぱり綺麗だよなあ、と言う感想が一番最初に浮かぶ。一応相手は男なのだけれどほかに良い言葉が思いつかない。
「牛久だってかっこいいよ」
ライフセーバーみたいだ、という素直な褒め言葉がこそばゆくて「ありがとう」としか返せないのあった。