「うん、今日はそう言うことだから……うん、お願いするね。それじゃあ」
電話を切ると買い物に出ていた福井ちゃんが帰って来ていた。
「春江、坂井には言い訳ついた?」
「いちおうね」
今日は久しぶりに福井ちゃんの家にお泊りすることにした。
夕方から降り出した雪のせいで帰るのが億劫になってしまったというのが一番大きな理由だけれど、ただ単に久しぶりに友達の家に泊まりたかったというのもあった。
こうやって泊まるのなんて何年振りだろう。
「夕食作っておくから、お風呂洗って沸かしてくれる?」
「了解」
気の置けない女友達と過ごす冬は嫌いじゃない。
「ああ、あとこれ」
そう言って渡されたのは小さなビニール袋。
隙間からは柑橘の爽やかな匂いと凹凸のある黄色くて真ん丸なもの。
「柚子?」
「今日は冬至だから柚子をね」
「……そっか、今日だっけ。うん、お風呂沸かすときにいっしょに入れておくね」
かさりと揺れるビニールから柑橘の匂い。
普段は入浴剤なんて入れないけれど、この匂いを嗅いでいたら俄然柚子湯の気分になって来た。
たまにはこういう日があったっていいよね。
福井ちゃんと春江ちゃん。
今日は冬至ですね。