ノーサイドの笛が鳴った時、体がかすかにぶるりと震えた。
だってそうだろう、決勝という大舞台のきっぷがいま俺の手元に転がり込んできたのだ!
「……スピアーズ」
隣にいたサンゴリアズはどこか悔しさをにじませつつ俺に笑いかけてきた。
「最近お前と試合するとこういう白熱した展開になりがちだよな」
「去年の準決勝も今日の試合も、サンゴリアスだから楽しかったのかもね」
「勝たなかったら許さねえからな」
背中をバンバンはたきながらの激励はちょっと痛いけれど、このはたいてきた手の強さはきっとサンゴリアスの悔しさなのだ。
「負けたらもっと強めにはたいてやるから覚悟しとけよ!」
そう言ってスタッフさんたちのほうへ向かっていくサンゴリアスの背中を見て、やっと俺は気付く。
(そうか、いま俺はサンゴリアスのここで負けた悔しさを背負ったんだ)
客席からTMOの多さを愚痴る声や、最後のトライ取り消しへの文句が聞こえる。
確かにそれらは俺に都合のいい方向に転がっていったのは事実だ。
こうした気持ちが来週の決勝戦で心の壁になるかもしれない、でも俺はその壁を越えていける。
負けた悔しさも審判への文句も何もかもを超えて俺はあの優勝カップをつかみ取るんだ!
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スピアーズとサンゴリアス。
今日の準決勝すごかったね……