「さっむ!」
爽やかな冬晴れの下にレッドハリケーンズの声が思い切り響いた。
12月上旬の東京は日差しこそ暖かいが風はひんやりと冷たい。
「この時期ならしゃあないんと違う?」
「寒い寒い騒ぐなら少し走ればいいのに」
「発想がゴリラやないかい!」
「三人とも凍えてなぞ居らずに最初から温まるものを飲めばいいだろう、熱燗とか」
そんなツッコミを入れてきたのは全身真っ黒の服に身を包んだブラックラムズである。
ついでに手元には紙コップが4つ乗せられた段ボールトレイもある。
「試合前に飲んだら酔うわ!」
「冗談だ、ホットコーヒーを買って来たから飲むがいい」
「赤いのがすいませんね」
「我は気にしておらぬぞ、元気な事はいいことだからな」
早速ホットコーヒーを受け取り、各ブースの賑わいをいつものように遠目から眺めて過ごす。
それぞれのサポーターが開幕前の時間を思い思いに過ごすのを見るのは心地の良い気分である。
「にしても、あのゴ〇ラの模型大人気ですよね……」
「まあ人気モンにはあやからんとな、一応プロスポーツやし」
「一応をつけねばならぬところが悲哀を感じるゆえんだな」
「コーヒーごっそさん、羊のおっちゃん」
「……羊のおっちゃんとはほめられた気がせぬ呼び方だな」
「せやかてそう言う名前やんか、今日は勝ち点貰ってくわ!」