ここのところ、布団を被っていても寒いと感じる日が増えた。
「おはようございます、釜石」
「……なんでお前人の布団に」
「寒かったので」
当然のように布団に潜り込んでいた八幡の事はもう無視を決め込み、さっさと布団を出る。
というか八幡は仕事をしているのだろうか。もう年末まで2週間程度しかないぞ。
寝間着を脱いで発熱素材のシャツの上から紺の着物を着ていく。
「160亀甲の紺の着物と羽織……それ私が今年の鉄の日にプレゼントした奴ですよね?」
「ウールとか言ってたから試しに着たらあったかくて気に入ったんでな」
帯は白地に青の明るい角帯をさっと縛り、その上に羽織を着てフリースの足袋(これは此花がくれた)を履く。あとは外に出るときに内側に室蘭が箱で寄越してくれた張るホッカイロでも張れば結構何とかなってしまう。
「……来年もウールの着物にしますね」
「おう、でもお前隙あらば着るもん寄越すのは止めてくれると良いんだがな」
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冬の釜石
冬という季節は道産子にとって戦争である。
発熱素材の下着の上にパーカーと半袖、下はカーゴパンツの下に丈の長い靴下も履く。
これぐらい厳重にしないと屋外の寒さに耐えられないが、暖房の効き過ぎた室内や高炉周辺の暑さにも耐えられない。
此花なんかは道産子なら寒さに強いのだろうと言うけれど、僕はとにかく寒さが駄目なので防寒は早めにしておかねばならないのである。
天気予報によれば夕方から雪が降りだすらしい。
(今夜はカレーラーメンが良いなあ……)
兄に言ったら二人分作ってくれるだろうか?
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冬の室蘭
大阪は関西において特に温暖な地域であると言われている。
気温は氷点下を下回ることは少なく、盆地の京都に比べれば滅多に雪も降らない。
こうも寒いとさっさと部屋を暖めて朝ごはんを食うに限る。
暖房をつけてから着る毛布のまま(鹿島がプレゼントしてくれた)台所で湯を沸かし、パンをトースターに放り込み、テレビでざっとニュースを確認する。
「……スポーツニュースはどこもフロンターレ優勝だな」
アントラーズと地元のチームがイチオシの人間としては複雑な心境であるが、こればっかりはしょうがない。
部屋も温まってきたので、着る毛布とパジャマを脱ぐとつなぎの上に室内用の半纏を羽織る。
焼けたトーストにインスタントのスープが一杯。物足りなければ買い置きのお菓子でも食えばいい。
「いただきます」
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此花ネキの朝
「起きろ!」
「んぇ……」
布団を無遠慮に引っぺがしてきたのは君津だった。
やけ酒による二日酔いの朝だというのに残酷な行いである。
「朝飯と着替え準備しといてあるから起きろ」
「……きみつってさ、」
「うん?」
「たまにびっくりするほど新妻っぽいよね」
「お前があまりにも自活できないからな」
「俺はイケメンだから周りがほっとかないんだよ」
「子どもっぽいの間違いだろ」
渡されたのはいつもの作業着である。
アントラーズが優勝を逃そうが何だろうが仕事は仕事なのだ。世の中は残酷である。
本当なら君津とパブリックビューイング後に祝い酒をするはずが(千葉は密かに応援している黄色のお犬様がプレーオフ負けちゃったのでエンリョした)実際はやけ酒の二日酔いである。
アントラーズ本人が特に気落ちしていない(本人曰く『来年優勝すればいい』とのこと)のでそこはまあ救いかもしれない。
朝ごはん食べたらいつもの作業着の上にあのアントラーズのパディットジャケットを着ることにしよう。
(せめて、よく頑張ったって顔で迎えてあげなくちゃダメだもんね!)
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鹿島の朝
みんなの冬支度ばなし。