「……ブルーシャークス、ほんとにいろいろやるな?」
今週末の試合会場でのイベント告知RTの作業を行いながら改めてイベントの内容を確認すると、その豊富さにため息が出た。
お菓子の配布に多種多様なマスコットキャラグッツの販売、芸人や歌手を呼んでのライブ。
自分のホームゲームでもこんな風にできるだろうか?と悩んでしまう。
グルグルと悩んでいると携帯電話が鳴り響く。
『シーウェイブスさん?お久しぶりっす』
どこかチャラチャラした雰囲気の声が電話越しに聞こえてくる。タイミング的にも間違いない。
「ブルーシャークスか」
『ですです。今週末の試合なんですけど、釜石物産展みたいのやりたいんですよ』
「うちの物産展?」
『せっかくの釜石戦ですからね。それで、そういう物産展みたいのってどこに連絡したらいいのかなーって』
「なら東京にある岩手のアンテナショップだな。話、繋いでおくか?」
『そのくらい自分でやりますよ、サラリーマンなんでこういうのは大得意っす』
ブルーシャークスは折に触れて自分は会社員でありラガーマンだということを口にする。
境遇でいえばうちとそう変わらない環境下であるだろうに、こうして明るく振舞えることがひどくうらやましい。
「……お前は前向きだな」
『強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない。って言うでしょ?』
全く知らない言葉が出てきたので「なんだそれ」と声が漏れた。
『海外の小説の一節ですよ。俺らもそうだと思いません?』
「だとするならハードルが高いな」
『俺らはそういう世界の住人なんです、わかってたことでしょう』
ラグビーチームとして生きていくには試合への強さとファンへの優しさが必要だと言いたいのか。
気持ちはわかるが、そうだとするなら世界はあまりにも過酷すぎる。
「しんどくないのか」
『うち追い出されたときに比べりゃあ楽なもんっすよ。そんな泣き言吐いてる余裕あんなら俺が勝ち点もらってきますからね?そんじゃ』
手厳しい一言と一緒に電話が切れる。
強さも優しさも捨てずに生きていかなければならないこの世界で、死ぬまで悪あがきを続けるのはきっと勝利の甘美さを知っているから。
「……いい加減勝ち点持ち帰ってやらないとな」
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シーウェイブスとブルーシャークス