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コーギーとお昼寝

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どこにもいかない君のために

ずっと部屋にこもったまま出てこない片割れに小さくため息を吐く。
この調子ではいい加減食事の一つも取らせようと買って来た弁当が冷めてしまう。
「開けたれ、ヴェルブリッツ」
「いまそれどころじゃないんだ」
扉越しに帰ってきた答えにふうっと小さくため息が漏れた。
弁当をいったん床に置いて、鍵の脇を思いきり足蹴りすれば部屋の鍵が壊れる音と一緒に何かが崩れる音がした。
それはここ数年のチームの活動記録や選手たちの勤怠記録、薬物依存にまつわる書籍や薬物事案の判例をまとめた書籍の山だった。
(……こいつ、全部確認してたんか)
ドアをぶち破ったときに崩れた書類の山に埋もれたヴェルブリッツはひどく憔悴したような顔をしてこちらを向いた。
「降格しても脚力は落ちないんだな」
皮肉めいた言い回しは無視した。
書類の山を書き分けて弁当とお茶を押し付ける。
「飯、食おまい」
「……そうだな」

***

書類の山を片付けて二人分の食事スペースを作り、お茶と弁当をゆっくりかみ砕く。
俺の降格が決まったときと同じように二人きりのしずかな食事だ。
あのときは確か酒を持ってきていたが、もうそれすら遠い記憶のように思えた。
いま、こいつの頭には色んなものが渦巻いている。
活動休止がいつ明けるのか、選手たちと監督への影響、司法がどんな結論を出すか、ファンや周囲への影響、お金のこと、これからの行く末のこと、とにかく数えきれないほどのことだ。
「飯が零れとる」
「……悪い」
「今は飯のことだけ考えりん」
何をどうしてやればいいのか分からないけれど、きっと俺に出来るのはここにいてやることだけだ。
今だけでもこのクソ真面目でどこかに逃げられない男のそばでただ一緒に弁当を食ってやろう。




シャトルズとヴェルブリッツ

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