見ていた日曜ドラマのエンドロールを見終える前にテレビのリモコンを切る。
俺の庭であるはずのグラウンドがカメラによって泥臭い美しさで切り抜かれるのを楽しめたのは途中までで、今はもう悪酔いしたような気分でソファに深くもたれかかる。
「なに、もう酔っちゃった?」
「酔ったというか……なんか、きつい」
サンゴリアスは苦笑いを止めて「センチメンタルだ」と呟いた。
もう少し前から弱り気味の気持ちに変なスイッチが入ってしまったような気がする。
「先輩は十分強いし府中の街に貢献もしてるでしょ」
「まあな」
日本の社会人ラグビーの強豪の一角を担っている自覚はある。
けれど、同時にお偉方の意向によって捨てられて逝った奴や親から引きはがされた奴の顔を思い出す。
社会貢献の名のもとに親によって生み出され、生死の綱を握られながら生かされている。それが俺たちで自立することは現状無理だろうという事は分かっている。それでも俺たちはラグビーをするために生まれてきて、この足は泥まみれになりながら不規則に転がる楕円のボールを追いかけている。
「スポーツチームの価値って何なんだろうな」
「……1に勝利、2に感動、34は金で5に社会貢献、かな」
「やっぱ勝利か」
「うん、少なくとも俺はそう思うよ」
強くなければ生きていく資格すらないと言われた気分になって、アルコールが変なところに回って汚い言葉が漏れ出そうになるのをぐっとこらえる。
「みんなが求めてるのは強いサントリーサンゴリアスだから」
ストレートのウィスキーを一気に飲み干して深く深くため息を吐く。
「10年後、俺ももしかしたらアストロズみたいにお荷物扱いされる可能性だってある」
「ほんとにな」
俺たちにとって強さは全てで、大人の世界に努力賞なんてものはない。
その残酷な事実を飲み干してそれでも棄てられる日まで走り続けなくちゃいけない。
だって俺たちはラグビーボールを追いかけるために生まれて来たんだから。
ブレイブルーパスとサンゴリアス。ノーサイドゲーム1話の感想も兼ねて。