打ち上げ花火は空気の澄んだ秋が一番美しい、と教えてくれたのは誰だっただろう。
だからその美しい花火をファンと一緒に楽しむ企画が出てきた時になんとなくイーグルスに花火の誘いを掛けた。
『お気持ちは嬉しいんですけどその日は練習試合後なので体力的にちょっと……』
(練習試合か、練習でも試合後の疲れは尋常じゃ無いしな)
なら仕方ないと諦め『分かった』と返信をしたのが今月の頭。
そして当日になってみると、家族や友達連れで見に来る人々をほんの少し羨ましく思う自分に気づいた。
(誰も都合がつかなかったのは如何しようも無いからなあ)
あの後、近しい身内に話を振ってみたが誰も都合があわなかったので今日は一人だ。
花火を見に来る選手スタッフも家族連れが多く、一人でぼうっと花火を待っているのは自分くらいだ。
一人でも二人でも花火は花火だが一人でいると浮いている感じが否めない。
小腹を満たすのに購入した唐揚げをビールで流し込んでいると、スマートフォンが着信を知らせてくる。
(テレビ電話?然もイーグルスからか)
不審に思いつつも電話をつなぐと『こんばんわー』と手を振ってくる。
ベッドで寝そべっているらしいイーグルスに「急にどうした?」と聞いてみる。
『大した事じゃないんですけどぉ、声が聞きたくなりましてぇ』
普段よりも甘え気味の言葉遣いや微かに赤い頬を見て気づいた。
「試合後に酒でも飲まされたか?」
『ブルーシャークスくんがごはん奢ってくれたんですけどねぇ、水と焼酎水割り間違えて飲んじゃいまして~』
「其れでか」
『おうちまでは自力で帰ったんですけどそういえば今日デートの約束あったなーって、でも飲んじゃったから車使えないのでお電話しました~』
イーグルスは下戸ですぐに酔っぱらってしまうので滅多に酒を飲まないが、この調子なら本当に間違えて一口二口飲んだ程度なのだろう。
ほろ酔いの表情でゆるく笑うイーグルスがかわいいので少々表情が緩む。
「今日は多摩川の花火大会でな、イーグルスが暇ならうちで一緒に見ないかと誘ったんだ」
『そうだったんですねえ』
「ああ、」
言葉を続けようとした瞬間、花火の打ちあがる音がする。
咄嗟にスマホのカメラを切り替えて花火が上がるのをカメラに映し出す。
秋の澄んだ夜空に大輪の花が咲くとイーグルスが『たーまやぁー』と嬉しそうに声をあげた。
周囲にいるファンや選手スタッフも花火に感嘆の声を上げ、嬉しそうにスマホのシャッターを切っている。
『はなび、きれいですねえ』
ふわふわとした声の酔っぱらいがそう呟く。
選手やファンとみる花火は美しい。
でもライバルであり可愛い後輩と一緒に見る花火はまた違う美しさがそこにあった。
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ブラックラムズとイーグルス。
公式の花火鑑賞動画から思いついたネタでした。