「さっっっっむ!」
車から一歩外に出た瞬間吹き付けてきた冷たい風に、富士山のこちら側と向こう側の違いを感じる。
心なしか家出た時よりも寒い気がするのはなぜだろう……。
「ブルーレヴズさん、」
「イーグルスさんお久しぶりです」
「なんでこんな寒いとこ選んだんですか……」
ベンチコートとマフラーで全身防寒したイーグルスくんのまなざしは本気だった。
地元である磐田ならここまで寒くなかったでしょうに!という悲鳴に似た指摘は否定できない。
「色々あったんだよ」
「いやそれは分かりますけど寒すぎません????????」
「正直甲府とそんな変わんないかなーと思ってたんだよ……ちょっと舐めてた……」
ごめんと心底詫びると「寒いなんて言わせたくないならマフラー配るべきは今日だったんじゃないですかね?」と言い返される。
「今年の開幕戦のCM見てたんだね」
「去年もでしたけどレヴズさんって集客に対して本気ですよね」
「うちの社長が集客に使えるものは親でも使えって人だからねー」
社長のあの熱意は本当にすごいと思う、まあ人に遠慮も何もないので時々板挟みになって胃が痛む感じがするけれど。
でも狭いラグビー界の外から来て話題性のある企画を立ち上げててきた社長の事はすごいと純粋に感じてもいる。
「ああいう人もラグビー界には必要なんでしょうねえ」
「うん、それは感じてもいるんだよね」
寒さに吹かれながらそんな話をしていると、会場設営が始まっている。
「あ、そこのテント張り手伝ってくれる?」
「ええ」
ポールを組み立てながら昨今のラグビー界の話をしていると体が温まってくるのを感じてくる。
組みあがったテントを飛ばされないように固定してから上着のチャックを少し開ける。
「ちょっと動くだけでも結構あったまるよね」
「選手やスタッフはそうですけど、観客はじっとしてますから冷えますよ」
「せっかくだしほうとうでも配れないかなあ、山梨だし」
「配るのは無理じゃないですかねえ」
ラグビー場で楽しく過ごすためのアイディアを語り合いながら設営準備をしていれば、寒さもずいぶん楽になる気がした。
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ブルーレヴズとイーグルス。今日の練習試合の会場10度切ってたらしいね?