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コーギーとお昼寝

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あの子が休みを取るという

『八幡さん、11月の12日休みにしていいですか?』
電話越しに光が申し訳なさそうにそう聞いてきた。
「別にいいですけど職員にもちゃんと伝えておいてくださいね」
人間ではない私たちにも有休や福利厚生などの一般社員同等の権利が与えられているので休みを取ることは別に悪ではない(鹿島のように有休日数を無視する場合は別)が、
生来真面目であまり有休を取らない光が申請してくるのは珍しい。
『所長や職員さんはむしろ取りなって勧めてくれたので大丈夫です』
「そうですか。ところで12日って何かありましたっけ?」
わざわざ光に有休を取るように勧めて来る理由が思いつかずに尋ねると、光は『確認してないんですね』とつぶやいた。
『社会人野球の日本選手権ですよ、うちの野球部が30年ぶりに出るんです』
「あ」
言われてみれば納得の理由である。
私たち全員で共有している業務予定を記したウェブページを開いてみると君津と鹿島の野球部も出場する旨が記載されている。
『八幡さん本当に興味薄いですよね』
「自分のところの部活たちはさすがに覚えるようにしてますけど、他の製鉄所の部活まで覚えてられるわけないでしょう」
『……ほんとですか?』
それなりに大事にしてきたつもりだが、時折光や君津や堺からそういう疑いを向けられるのははなはだ遺憾としか言いようがない。
「まあいいです、12日の面談予定は繰り上げましょうか。23日の午前中でいいですか?」
『はい。あと今回の日本選手権は君津くんのところのかずさマジックくんも出るみたいですから気にかけてあげた方が良いですよ』
それでは失礼します、と言って光からの電話が切れる。
手帳の予定を書き替えておくとやっぱり光がまるで私を白状みたいに言うのがちょっとだけ腑に落ちず、釜石にメッセージを送ってみる。
『私って薄情な男に見えます?』
返事は思いのほかすぐに来た。
『急にどうした』
『ちょっと思うところがあったので。釜石はどう思います?』
『わしとわし以外で態度がだいぶ違うからわし以外の人間に対して薄情に見えるんだろ。もう少し他の奴も気にしてやれ』
そう言われても釜石が一番気にかかる相手であることは未来永劫変わらない気がするので『無理ですねえ』としか返せない。
自力でどうにもならない問題で不当に評価が下がっている気がする事に対する文句は、どこにも送りようがないので一服して切り替えるしかないのだった。



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八幡と光と釜石。
社会人野球の話のつもりが八幡の薄情さに話がズレていく謎。

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