まあ何となくこうなってるだろうな、という気はしていたのだ。
ベッドの隅に丸まった呉は一人静かに泣いていた。
「呉、」
「……俺はもう、何もしたくありません」
「気持ちは察する。でもね、
黒田の引退は仕方ないと思うよ」
そう、呉が落ち込んでいたのは先ほど発表された広島カープの黒田の引退であった。
25年ぶりの優勝に導いた名選手の引退を悲しむ気持ちは察するに余りあるが、仕事はしてほしい。
不在の周南に頼まれて呉の様子を見に行けばこれである。
「むり……もうむり……」
「語彙力の死んだオタクみたいなこと言わないで」
「次の優勝はいつだろうと思うと泣けてきて……」
そしてまた思い出し泣きが始まった。
駄目だこれ。今日明日使い物になりそうにない奴だ。
「……今晩泊まっていい?」
「どうぞ」
今日はもうずっとこの調子の呉の面倒見てることになるなあと思いながら、よしよしと呉の頭を撫でていた。
カープファン呉と巻き添え広畑の話。