北海道の夏はあっという間に終わりへと近づいてくる。
8月も終わりに近づくと半袖では薄ら寒い夜が続き、秋がマッハで駆け寄ってきている感じがする。
「よう、」
「兄ちゃん?」
玄関に突っ立っていたのは俺と同じ顔をした俺よりも大きな青年・日鋼室蘭だ。
その手にはビニール袋がぶら下がっていて、何かお裾分けでもしに来てくれたのかななんて期待してしまう。
「花火やらないか」
「……花火?」
「いや、昼間ちょっと押し入れ漁ってたら使ってない花火出て来たんだよ」
「もう夏休みも終わったこの時期に?」
「全国的にはまだ夏休みだからセーフ」
***
水入りのポリバケツとライターを手に社員寮の庭で花火に火を灯す。
フシュ―!と青い火花をあげながら花火は北国の夜空を鮮やかに染め上げ、遊び半分に振り回したり(※良い子はマネしないでね)しながら遊んでみる。
「なんかこうやってると夏って感じするよね」
「本当になあ」
北国の短い夏が駆け足で終わりを告げに来る。
勢いよく噴き出していた火花もやがて静まっていき、ただの炎になって行く。
「花火って切ないおもちゃだね」
「だから綺麗なんだよ、まだあるし全部使い切るぞ」
「独身寮の暇な子呼んでくる!」
俺と兄は数えきれないほどの夏をこの街で過ごすだろう。
だけれど、一度だって同じ夏は来ないのだ。
室蘭兄弟の夏休み。