子どものころ、釜石さんのところにトヨタさんと2人で行ったことがある。
光害のない三陸の真っ暗い夜の海を三人で散歩したのを今でもよく覚えている。
窓の外は大都市名古屋の光の海。
「ほんと、星空みたいだなあ」
トヨタさんに頼まれて名古屋の家の風通しに来ることは何度かあったけれど、そのたびにこうして窓の外の光の美しさに溜息を吐く。
名古屋の空は墨をぶちまけたように真っ黒で星が見えない。
だけれどこの家から見る名古屋の町の光は、子どもの頃に見た三陸の星々にも似た輝きがある。
指先でうっすらと光を繋いでいく。
あのビルの光が北斗星、あの光が冬の大三角形、流れていく車の光はさしずめ流れ星だろうか。
じっと窓の外の光の海を見つめていると、心の奥の棘が少しだけ抜け落ちる気がした。
フォロワさんからリクエストを頂いて書いた名古屋の話。