「真岡、手土産の苺もいいけど仕事の話をしましょう」
「……神戸ねーさまは怖いなあ」
ボソッと呟きながら私にいちごの箱を預けてきたのは真岡ちゃんだ。
見た目こそ10歳ほどの少女ではあるが、うちの会社のアルミ事業をほぼ一人で担い電力事業においても姉さんに次ぐ規模を持つ彼女には少々性格的に問題があった。
私たちから離れて一ずっと人で暮らしてる事や真岡の専門であるアルミについて私たちが口出ししづらくて放任気味に育てたせいか、少々自主自立が過ぎる節がある。
見た目は反抗期の小学生だがいかんせん中身は大人なので口も頭もよく回る。
姉さんに対しても慇懃無礼で4年前の品質偽装事件で怒りが達した姉さんは、半ばその憤懣をぶつけるように厳しく接するようになった。
「とりあえず言われたものは全部持ってきましたよ。
真岡発電所関係を赤いファイルに、アルミの製造状況に関しては青いファイルに入れてきました」
ざっと目を通した姉さんは私にも赤いファイルを渡してきた。
私も目を通してみると、内容は今年9月に開館した発電所の見学施設の利用状況や運営の維持管理に関する資料だった。
あらもないし読みやすく出来ていて問題は無いように見える。
(……言えばちゃんと仕事やるのよねえ)
ただちょっと、姉さんとの仲が微妙なだけで。
間に立ってる私のほうは胃がキリキリする気分で、二人の間に漂う嫌な沈黙にどうすることも出来ない。
「とりあえずまじめに仕事はしてるのね」
「そりゃもう、神戸のねーさまと違ってアルミの主力工場ですから」
「うちは鉄の会社よ?」
「でもアルミもうちの柱ですよ」
また始まった。一歩間違えると喧嘩になる奴だ。
ふたりの皮肉の応酬にちょっと疲れてしまったので台所で頂いた苺をざっと水洗いすると、そのままぱくりと頬張る。
「まだちょっと酸っぱいかな」
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加古川ちゃんと神戸ネキと真岡ちゃん