「釜石おじいちゃんなにしてるの?」
片方の耳にイヤホンを挿したままパソコンを弄っていたおじいちゃん、もとい釜石さんに聞いてみると「ラグビーの結果を見てた」とかえって来る。
「へー」
「シーウェイブスの試合結果の確認と日本選手権決勝の実況をな。今はネットで実況が聞けるからテレビが見れなくても確認できて便利だよなあ」
画面は入れ替え戦の結果が表示されていたけれど、切り替えてみればネット中継の操作画面も出てきて器用なものだと感心してしまう。
「あー、確かに」
「聞くか?」
「俺ラグビーは専門外だからいいや」
「明日神戸とラグビー見にいく予定でなあ、お前さんが興味があるなら連れて行こうかと思ったんだがなあ」
「じゃあ俺と一緒にアントラーズ戦見にいってくれる?場所は東京じゃ遠いだろうから仙台で良いよ」
「サッカーはルールがさっぱりでなあ」
「まあそうだよねえ」
予想通りの回答に軽い溜息なんか漏らしつつ、暇つぶしがてら中継映像を一緒に眺めたりなんかする。
和装に大人の落ち着いた雰囲気を醸し出すこの人のことは大して詳しい訳じゃない。
君津に言わせてみれば『うち(新日鉄)のなかでもあの人は特別』なんだそうだけど、なんとなくわかる気がする。
最年長の風格って奴なんだろうなあ、これ。
此花の厳しくも面倒見のいい感じとか、八幡さんのあの怖そうな雰囲気とか、そう言うのとは全然違う一人だけ超然としてるような空気はこの人特有のものだと思った。
「おっ、」
画面の中で一人の選手がボールを掴んで独走していく。
そして彼はゴールラインを割り、高らかなトライコールと笛が響いた。
「これでいよいよ分からんくなって来たなあ」
嬉しそうに笑う釜石おじいちゃんに「そうだねえ」と俺はかえすばかりであった。
おじいちゃんのいない鹿島は釜石をおじいちゃんに見立ててたら面白いなあというアレ。