冷蔵庫のタッパーには卵液のよく染みたフランスパンが4切れ入っている。
ティファールのフライパンにほんの少しのエシレバターを落とし、軽く広げてフランスパンを並べる。
溶けたバターの香りにほんの少し混ざるマンゴージュースの香りが思わず頬を緩ませる。
(卵液に果物の果汁を入れると美味しいって聞いて試してみましたけど、正解でしたわね)
此花辺りが見たら『平日の朝ごはんに許されざる贅沢だ』と怒るのだろうけれど、いつもこんなにいい朝ご飯を食べている訳じゃないから許してほしい。
だって今日は月曜日なのだ。ブルーマンデーで朝から夕方まで会議の連続。そう言う日ぐらいいい朝ごはんの一つでも食べさせて欲しい。
フレンチトーストを焼く間に、加古川から貰ったモカエキスプレスに水と紅茶の茶葉を仕込んで火にかける。これが沸くまでには少し時間がかかるからその間に冷蔵庫からミルクを出してカップに先に注いでおく。常温のミルクに紅茶を注ぐと味が美味しくなるのだ。
フライパンにもう一度バターを足してからトングで裏面を軽く焼く。やがて両面がきつね色に焼きあがったフレンチトーストが食欲をそそる匂いを立ててくる。
これをお気に入りの白い皿に盛って、お気に入りのイチゴジャムをひとさじ。
最後にモカエキスプレスで作った紅茶のエスプレッソを常温のミルクと合わせれば朝ごはんの出来上がりだ。
月曜日の憂鬱を吹き飛ばす、美味しそうな匂いに心が幸せになっていくのがわかる。
「いただきます、」
神戸ネキとフレンチトースト。