宿命とか運命とか信じているわけでもないけれど、たぶんそういう物はあって好転するも暗転するもすべて最初から決まっているものだ。
たとえるのならば人生は常に夜中のレールの上を走る列車のようなもので、どこで切り替えられているのかも分からない。
(・・・・・・暑い)
押上の本社から望むスカイツリーは太陽に突き刺さりそうなほど高い。
「日光、伊勢崎は少し出かけるって」
「どこに?」
「上野」
まだ俺と兄さんは、抜け出せない場所にいる。
***
上野という場所は兄さんにとって過去の苦い記憶と繋がっている。
かつて愛した女の名前を髣髴とさせるせいだろう。
ああ、俺にはどうしようもないことにいまだに俺は苛立ちを覚える。
いったいいつになればその世界に俺は存在できるのか。