五浦の海が見える。
赤い建物と青い海の見える場所。
「あー・・・・・・」
「北茨城、汗だらだら」
「んじゃあハンカチ貸して」
呆れながら高萩がハンカチを差し出したので、ぐりぐりと汗をぬぐう。
海沿いの木陰とはいえ全国的な猛暑だという。
そしてゆっくりと歩きながらひとつひとつを目で確認する。
「そこまで必死に保守点検する理由ってあるの?あくまでもここは茨大の管轄だし」
「親が大切にしてたもの大切にするのは当然でしょ?」
五浦は何も残せないけれど、なんて言っていたけれどここを残してくれた。
まだ僕が生まれる遥か昔の画家の足音の残るこの場所を。