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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

関西女子がティータイムする話

神戸はとにかくティータイムが好きだ。
繁忙期以外は紅茶とお茶菓子での一服を欠かさず、自分と加古川と本社に常に紅茶の茶葉とティーセットが常備されているあたりにだいたい察して欲しい。
基本的には加古川か自分のところの人間とだけお茶をするが、時々私と西宮を招待してくることもある。
きょうは、その珍しい≪私と西宮を招待してのお茶会≫の日であった。
「邪魔するよー」
「あら、今日はずいぶん遅かったのね」
「色々あってね。これ手土産」
小さい紙袋に入っているのはセミノールと言う柑橘で、ちょうど今の時期が旬になる。
とりあえず入って、と告げられてそろりと足を踏み入れる。
神戸の家は会社の方で所有している西洋式のなかなか立派な邸宅で、名目上は倉庫になっているらしいが倉庫と言うよりも完全に神戸と加古川の居住スペースとなっている。
そのサンルームで、加古川が西宮の前で紅茶を入れていた。
「西宮、加古川」
「此花さん、お久しぶりです」
「うん、久しぶり。相変わらず神戸にこき使われてない?嫌んなったらうち来な?」
「あげませんからね?」
神戸が即座にくぎを刺してくる。おお怖い怖い。
ケーキ台の上には一口サイズのイチゴタルトとチョコレートが数粒。
紅茶の入ったティーカップを三人分差し出してから加古川はさっと台所に戻っていく。
「相変わらずの働き者だねえ」
「本当にいい妹でしょう?少し休んで欲しいぐらいだわ」
「まあ仕事以外に無頓着でも困るんだけどね」
「勤勉なことはいいことだと思うけど?」
「……西宮、生きる上では勤勉以外のとりえも必要だよ」
「その発言矛盾してないかしら」
「労働しかしない人生なんて大して面白くないだろ?」
「その意見には同調するわね」
私はイチゴタルトをほうばり、西宮はチョコレートを齧る。
神戸はその話に耳を傾けながら紅茶をすすっている。
「直江津みたいに仕事以外の事にまったく無関心だともう口も挟む気もないけどね。ま、神戸は加古川に嫌われないようにちゃんと労わってあげなよ」
「私だって多少の労わりの心はありますわよ」
「ま、それもそうか。西宮の近況は?」
「特にはないかなあ……ああ、そう言えば千葉のコークス炉の炉体更新が」
「……西宮もたいがい真面目だよなあ」
その真面目さを否定はしないんだけど、そういう話をしたい訳じゃないのだ。
とは言っても神戸と違い、私と西宮は小さい施設であるのでいつでも話題がある訳じゃない。
「そう言えばそうでしたわね、私の方も上工程の集約の真っ最中でどうも調子が……」
「最近は高炉の休止や解体が続きますね」
「時代の変化なんだろうね、これも」
「……ねえ、此花。どれだけ時代が変わっても集まれることって大切だと思わない?」
「平成ももうすぐ終わるしね、まあこの中の誰かが死なない限り、こうして集まり続けるんだろうね」




神戸・此花・西宮の話。
そう言えばこの三人の話は書いていなかったなあと思ったので。

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黒煙と石炭

小山駅のホームもだいぶ寂しくなってしまったものだ、と思う。
2年ほど前に水戸線と両毛線から立ちそばが撤退して自販機と椅子しかない状態になってしまって、鉄道の利用客も年々減少傾向が続いている。
昨日渡されたチラシを見返して、ふっと薄い笑みをこぼす。
今年のゴールデンウィークにJR東日本大宮支社主催の栃木ディスティネーションキャンペーンの一環で、約半80年ぶりに小山~下館間でSLが走ることになったのだ。
「……楽しみですね」
半世紀以上離れていたの石炭と黒煙を想うと酷く懐かしい気持ちになる。
結城さんや下館さんにもこのことをお知らせしておかないといけない。
遠くからレールのきしむ音がする。
帰ったら、ちゃんと報告しよう。



水戸線にSLが来るよ!と聞いてワクワクを止められなかった。

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まだスイカの季節じゃない

出光と昭和シェル、別に付き合ってないし別に擬人化である必要性もないような話。


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特に大したことのない休日の話

よく晴れた金曜日だった。
金曜日が休みなら映画でも見に行きませんか、という誘いを貰ってのこのことハーベストウォークにきた僕と結城さんは何故かアイスを食べていた。
シングルコーンのアイスが二個、彼の手元に並んでいる。
「とりあえずバニラと季節限定のさくらにしたんですけどどっちにします?」
「じゃあ、さくらで」
淡いピンク色のアイスは確かにこの季節らしい色をしていて、惹かれる気持ちはなんとなく分かる。
「それ、少し味見させてもらっても?」
「どうぞ」
刺さっていた匙でアイスをひと掬いして差し出すと、それを受け取らずにそのままぺろりと口に放り込んでいく。
「……なんか、塩っけありますねこれ」
ぱくりと食べてみると確かに塩っ気がある。
しかし桜の風味がしっかり香り、祝い事の席に出されるさくら茶を彷彿とさせた。
「どうぞ、」
「どうも」
バニラアイスがひとさじ差し出されると、口直しにひとくち貰った。
……うん、普通のバニラだ。
「下手にチャレンジするもんじゃないですね」
「嫌なら私食べますけど」
「結構です」
さくらアイスをもくもくと飲みこみながら、なんだか今日は妙に平穏な気がした。




特に何てことない結城小山。
某ピンク色のアイス屋のさくらアイスはマジでさくら茶の味がしました(食べた感想)

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いつかの夜の話

そのひとは、悲しいことも苦しいことも全部煙草の煙と一緒に飲み込んで暮らしてきた。
「新しい煙草、カートンで買っといたよ」
「あんがと」
ねーちゃんはべりべりと包装紙を破いて新しい煙草の封を切る。
ワンカップの空き瓶にたまった煙草の吸い殻を俺に突き付けてくるので、黙って吸い殻を捨てておく。ほんの少し水を入れておくことも忘れない。
社員寮の小さな庭に繋がる窓のサッシに背中を預けてぼうっと月を眺めている。
「……なあ、」
「うん?」
「明日には、住友じゃなくなるんだな」
住友金属と新日鉄の合併の話が出たとき、一番複雑そうな顔をしていたのはねーちゃんだった。
俺たちに決定権はないから覆すことも出来ずにこうして見守っていくほかなく、多少揉めたりはしたものの結局合併は決まって明日からは新しい会社になる。
「釜石さんたちといっしょは嫌?」
「別に嫌いではないけど、ただ住友から切り離されるってのが上手く受け止めきれないだけだよ」
とんとん、と煙草の灰を空き瓶に落とす。
灰は水に落ちて小さな音を立てて沈んでいく。
「時代の流れってのは残酷だと思わない?」
「それを見守っていくのが俺たちの役割なんじゃないのかな」
「まあそうだけどさ」
お駄賃代わりに買った缶チューハイを開けると、秋の匂いがする。




此花と尼崎。姉と弟が見てきた一つの歴史の終わりの話。

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