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コーギーとお昼寝

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滴り落ちる水辺の秋

ばちゃーん!と大きな水音がして、目の前の海を見ると俺の可愛い弟が海に落ちていた。
幸い冷静な様子の弟は溺れることもなく冷静だった。
「何してんの?」
「ごめん……」
自力で岸壁まで泳いできた弟を水辺から引き上げる。
秋の北海道のしんと冷えた海水のせいで体は冷え切っていて、急いで所内の移動に使ってる小型車に乗り込ませた。
濡れた服を脱がせて後部座席に乗せてあったタオルで体をぬぐう。
「ったく、なんで海に落ちたんだか……」
「なんか海に呼ばれた気がして海の中覗き込んでたら体のバランス崩して落ちちゃった」
茶化したような表情でそう笑う弟に肝が冷えそうになるのはこっちの方だ。
車に積んであった大人用の作業着を着させ、とりあえず弟のところの事務所に連れて行こうとエンジンをかけた。
「海はさ、俺が産まれた時から変わらないよね」
「……そりゃそうだろ」
「ああこんな風に永遠不変のものでありたかったなあと思ったわけ」
「高炉廃止でも告げられたか?」
「いや、そう言う事じゃなくてさ。なんだろ、僕とかにも寿命ってあるんだなあって」
弟の言うことは確かにもっともであった。
人の手によって生まれた不完全な存在たる自分たちは過ちも寿命も存在した。
「……じゃあ寿命が来る前にしたいことは全部するとして、今日は一緒に飯食うか」
「それそっちがしたいだけじゃん」
「なんか食いたいもんは?」
「ジンギスカン、それも生ラムの奴が良い」





室蘭兄弟の話。

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