引っ越し祝いに貰ったものを自分の部屋に積み上げながら、ふうっと小さくため息が漏れた。
乾麺のそばやお酒類、引っ越し祝いの花束、金券やカタログギフトの冊子、タオルや箱テッシュなどその量は結構なものだ。
「ワイルドナイツ生きてる〜?」
「勝手に人を殺すな」
ひょっこり顔を出したアルカスが「いや外も人が多くてすごかったから」とつぶやく。
俺の新しい拠点となるさくらオーバルフォートに拠点を移したアルカスはいわばご近所さんであり、引っ越しの合間にちょくちょく顔を出してきていた。
「結構メディアも来たからね」
「注目度が桁違いだわ、昼ごはん食った?」
「食ってないけど何?」
「いやこのそば貰っていい?」
「俺の分も作ってくれるなら、冷蔵庫の食材好きに使ってくれていいよ」
「数日分のご飯代浮いたな」
そう言いながら乾麺のそばを持って台所で早速料理を始めてくる。
太田から持ってきた荷物は一通り出したがとりあえず誰から何を貰ったかを把握し、遠方から引っ越し祝いをよこしてきた人たちには礼状の準備も要る。
花束も意外に多いので花瓶が足りるか不安になってきたが、最悪ペットボトルに刺して置けばいい。
それに明日様子を見にくると連絡してきた身内の相手や、9月以降に本格稼働する施設の担当者への挨拶は必須だろう。
「……引っ越し準備もうやだ」
「引っ越したじゃん」
「まだ開けてない荷物が積んである」
「のんびり開けてけばいいじゃん」
そう言いながらアルカスがサクサクと手を動かしていく。
湯がいたそばに大根おろしと麺つゆ、刻みネギや茗荷などの薬味類、細かくしたサラダチキンがさっと乗せられる。
「へいお待ち」
「ん」
とりあえずもう考えるのはやめよう。
日が暮れてメディアが帰ったら体を動かして、シャワーも浴びて、今夜はしっかり寝よう。
そばを思い切りかき混ぜてずるっと啜れば爽やかな味がする。
「……72点」
「微妙な点数やめて」
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ワイルドナイツとアルカス。熊谷へのお引っ越し編。