4月1日、金曜日の朝はずいぶんと肌寒かった。
暖かかったり寒かったりを繰り返す天気が嫌になりつつ、今日は練習着ではなくスーツでうちを出ないとならない。
「ワイルドナイツじゃん、スーツなんて珍しい」
ジャージをまとったアルカスがスポーツドリンク片手に向こうから歩いてきていて、走ってきたんだろうと察する。
「新会社の関係で呼び出されてるんだよ」
「独立したんだっけ?」
「パナソニック系のスポーツチームを全部まとめて一つの会社にしたんだよ、これからその顔合わせ」
「あ、そっか今日から新年度……」
「そういう事。昨日の非公式決勝戦の件も言われそうでめんどくさい」
「非公式決勝戦ってあれでしょ?あんたが庭先を貸してコロナで中止になった決勝戦と同じ組み合わせで試合した奴」
コロナで決勝戦が中止になった高校生たちのために同じ組み合わせで試合を行い、中継もしたあの件はいまだ賛否両論が分かれている。
一般メディアにもいくらか取り上げられているようでうちへの非難の声もある。
「正しいと思ってやったんなら否定も肯定も受け入れるしかないじゃん」
「まあね」
少なくとも俺は安全措置を行ったうえで正しいと思った事をした、そう思っている。
協会の判断を無視したという考えもあるしそれも受け入れなくちゃいけない事だろう。
「アルカスに肯定されると少しは気が楽になるな」
「そりゃーどうも。ほら、仕事行ってきなよ」
ぽんとアルカスに背中を押される。
その触れた手から肌寒い朝を超える元気をほんの少しだけもらうと「いってきます」と応えた。
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ワイルドナイツとアルカス。