何となく気が晴れないときというものはあるものだが、今日はもうだめかもしれんなあと思う。
ブルースにでも電話してみようかと思ったけれどあいつは今忙しいのでやめておく。
スティーラーズのおっちゃんでもええけどこういう話が一番嫌いな人やしな、シャイニングアークス?あれは論外。
こういう時は出来ればあんまり遠くない、近くにいる人がええな。
「……ライナーズのじいちゃんならいけっかな」
スマホを弄って電話を繋いでみると『レッドハリケーンズ、腹減っとるん?』と聞いてくる。
俺が小さかった時からの付き合いやしそこまで気ぃ使わんでええ人ではある。
「腹は減ってへんわ」
『そら残念、今日結構ええ感じのキーマカレー出来たんやけどなあ』
電話越しになんかミキサーの音がして、料理してるんだろうなあというのが伝わる。
こういう音ってなんか聞いてて不思議と心地ええよな。
「何キーマ?」
『肉は鶏と牛半々、野菜は人参・玉ねぎ・ピーマン・たけのこの水煮』
「たけのこの水煮?!」
『これが歯ごたえ面白くなってええねん、あとパプリカとかも入れてある』
「ピーマンとパプリカほぼ同じやん」
特に何もない他愛もない話が耳と心に心地よい。
しばらくダラダラと話していると少し眠くなってきて「そろそろ寝るわあ」と言って電話を切る。
スマホは充電器に繋いでそのまま布団にもぐりこんで静かに深呼吸。
明日どれだけ辛い宣告を受けようとも、まだ俺は大丈夫だから。
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レッドハリケーンズの他愛もない電話が切れて、「何やったんやろうなあ」とつぶやいてみる。
だいたい誰かが俺宛に用事もなくいきなり電話寄こしてくるときはろくなことが無い。
スマホのニュース通知を見ると【NTT、ラグビーチーム再編へ】の見出し。
「これかあ」
レッドハリケーンズ心の裡のもやはこれだったらしい。
俺と話して少しでも晴れたんならそれでいいだろう。
「にしても最近こういうの多くて嫌んなるな」
仲間が減るのは寂しい。けれどそれを仕方ないと諦めてしまう、そんな自分もいる。
長く生きてるうちに多少感情が摩耗したんかなあという気もするけれど俺にはよぉわからん。
まだ暖かい焼きカレーパンをかじりながら俺の裡には何があるのだろうと思ってしまう、そんな日曜の夜である。
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レッドハリケーンズとライナーズ