*ぷらいべった再録
*カシオペア→北斗星なお話
夏は一番好きな季節だった。
天候は安定してるし、真っ青に晴れた空が好きだった。
「カシオペア」
歌うような声で彼は僕の名前を呼んだ。
寝台特急北斗星、最後のブルートレイン。そして僕の好きな人。
「なんでそんな泣きそうな顔してるんですか」
「……だって、」
「泣くのは自分が廃止になる時にしなさい」
僕の頬を掴んだ彼は目を見据えてそんな事を言う。
ずっと焦がれて止まなかった青い瞳の奥の北斗星の強い輝きが僕をじっと貫いた。
それがあまりにも綺麗なので僕の涙の流れが少しだけ弱まる。
「北斗星、さん」
「はい?」
「好きです」
「……うん?」
「ずっと前から、あなたが好きです」
壁の時計が16時の鐘を鳴らす。
ゆっくりの手が僕の頬から離れ、彼の視線が外れる。
「カシオペア、」
「はい?」
「それはきっと勘違いですよ」
「違います」
これは、本心からの恋だ。
何年も必死に考えて出した僕の結論である事を言外に伝えると、彼は少し溜息を吐いて「……行ってきますね」と呟いた。
(これ、失恋なのかな)
窓の外を見れば札幌駅を涙雨が包んでいた。