幽霊にも外出の自由がある、という事を知ったのはつい最近のことだ。
そして仕事の無くなった身を思い切り俺は謳歌していた。
「北斗星さん、見てください!」
そうして差し出したのは寝台特急ヘッドマークを模した缶だ。
ヘッドマークは目の前で微妙な顔をしている北斗星さんのヘッドマークだ。
「……自分(カシオペア)のヘッドマークじゃないんですね」
「俺のゴールデンフィンガーが10種類の中から一発で引き当てたんですよ?!凄くないですか!?」
「いやまあ確かにすごいですけど、自分の奴引き当てましょうよ」
「そもそもこれブルートレインしか入ってませんからねー」
本当はトワイライトエキスプレスも入ってるけどそこは黙っておこう、それに10種類のうち1つはシークレットだから俺っていう可能性も無きにしも非ずなのだ。
「せめて自分のヘッドマーク引き当てて喜ぶべきでしょう」
「そんな事しませんってあ、あとこの飴メロン味なんですよ。夕張メロンの色でした」
ほら、と缶を開けて見せてみる。
鮮やかなオレンジ色の小さな粒が缶にぎっしりと詰められているのを北斗星さんがのぞき込む。
「一つ、食べます」
「いいんですか?」
「もちろん」
すっとその顔を引き寄せて、唇を合わせる。
そして相手の口を舌で割ると飴玉を相手の口に転がした。
「どうですか?」
驚きと羞恥に満ちたその顔はもうどんなものよりも可愛くて、触れ合せた唇は最高に甘いメロン味だった。
寝台特急ヘッドマークキャンディ、買いました。
一発で北斗星引き当てたのでこれはもうカシオペアからのご加護だな!と思って書いた。