落ち葉の山にアルミホイルでくるんだ芋を入れてマッチで火を灯す。
燃えていく落ち葉を眺めながら深く息を吐き出すと遠くから声がする。
「日立なにしてんの?」
珍しく誰も伴わずにやってきた水戸は随分と着込んでる。
「……落ち葉焚き」
「へえ、美味しそうじゃん。焼けたらたべていい?」
こくりと頷くとにひっと楽しげに笑う。
了承の意味も込めて頷くと「そっか、楽しみだなー」とつぶやく。
「ほかの奴も焼く?」
「おっ、なんかある?」
「ひたちなかに分けてもらったマシュマロが、台所に一袋ある」
「焼きマシュマロかあ、持ってきて」
「火傷、気を付けて」
そう言って台所に戻り、アメリカンサイズの袋に入ったマシュマロを一つ取り出す。
ついでに芋と蜜柑をいくつか取り出してアルミホイルで包む。
どうせ水戸に大半食べられてしまうだろうが気にすることじゃない。親愛なる県庁所在地様が飢えるのなんて誰も望んじゃいないのだ。
台所から焚き火の前に戻れば「遅いよ」とつぶやく。
「追加の芋持ってきた、あと焼き蜜柑用の蜜柑」
「おおっ、焼き蜜柑!」
だいぶ大きくなった焚き火に芋と蜜柑を投げ込んで、マシュマロと長い串を渡すと迷いなくマシュマロを串に刺して火に突っ込んでいく。
「水戸、」
「うん?」
「……県庁所在地就任日、おめでとう」
ぽつりとそう告げる。
茨城県成立の日である今日を祝うささやかな言葉だ。
「ありがと、まあでもそれ本当は明日なんだけどね」
「県民の日だし」
「まあね?」
県民の日おめでとう。
茨城県の成立した日ってことは水戸が県庁所在地になった日でもあるんだよなあと思いながら書いてました。