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コーギーとお昼寝

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うちよそクリスマスまとめ


クリスマスにフォロワさんに送った短編まとめ



*ニバラキ
「相変わらず、でっかいなあ」
ぽつりと大水槽の前で茨木さんは言う。
大きな水槽をゆうゆうとどこまでも自由に泳ぐジンベエザメは私が見てみたいとお願いしたものだ。
初めての一人旅、初めての大阪で案内役を引き受けてくれた茨木さんには感謝してもしきれない。
特別に入れて貰えたという夜の水族館は人気もなくシンと静まっていて、お互いの話声だけがこの空間を飾っている。
「あの、今日はありがとうございました」
「大丈夫ですよ、俺も楽しかったですから」
そのつりあがった瞳が温かな優しい春の海のように崩れる。
(あ、この人こういう顔するんだ)
水族館の淡い青の光と温かな海のようなまなざしがあまりにも美しくて泣きたくなった。
(私にだけこんな顔して欲しいな、なんて)
あまりに傲慢すぎる祈りを今頃この真上を飛んでるだろうサンタクロースが聞いていないことを願った。

*なとりで
『ごめんなさい』
名取にそう言われてクリスマスを諦めたのは今月の頭の事だ。
別に一緒に過ごせないことが悔しい訳じゃない、ええ全く。牛久が嬉々として恋人のもとに向かってようが何してようが別に私は悔しくなんかない。
仕事なのだから仕方ないとうそぶきながら今日も今日とて黙々と年末年始の大掃除に勤しむことにする。
(……しかし、私にもまだこんなに青臭い気持ちがあったとは)
それなりに長生きした身なのでもうこういう欲とは無縁なつもりでいたのに、名取の声や姿を欲しがる自分に驚きすらしている。
チャイムと一緒に「宅配便でーす」という声がする。
クール冷蔵便の送り主は……名取だ。
急いで箱を開けると、そこには少しだけ形の崩れたブッシュドノエルが鎮座している。
同封された封筒を震えながら開くと一枚のクリスマスカードが出てきた。
『メリークリスマス、私の大好きな人。
私はいけないけれど手作りのケーキを送るので食べてください』

*牛久色麻
クリスマスカラーの赤い箱にまずは丁寧に包装したワインを一本。
白とロゼののワインは自分の舌で選んだ自信作だ。
それとカガミクリスタル(これは竜ケ崎の会社だけど)のペアワイングラス。
以前から色麻の家に一そろい欲しいと思っていて今回思い切って買うことにした、デキャンターも買うか迷ったけど今回はやめておいた。
そして、クリスマスを祝うためのミンスパイ。
イギリスの伝統的なクリスマスを祝うお菓子だというがたまたまテレビで見て興味深かったという色麻のために一週間前から頑張って材料を買い集めて準備した。
そして最後に蓋をして緑のリボン飾りを。
「……よし、」
腕時計を確認すればちょうどいい時間だ。
今から駅に向かえば仙台行きのひたちに間に合うはずだ。
プレゼントの箱を無地の紙袋に入れてさっそく家を出る事にしよう、竜ケ崎・土浦・取手にはしばらく家を不在にするとは伝えてあるし何かあれば俺に連絡も来る。
(楽しみだなあ、)
今の俺に、恋人以上に欲しいクリスマスプレゼントはないのだから。

*とよなご
「……にしても、すごいカップルの群れだな」
紅葉をモチーフにしたイルミネーションのトンネルを埋め尽くす若いカップルたちに、思わずげんなりとしたような声が漏れた。
ここは三重県桑名市、なばなの里。
東海圏では有名なイルミネーションの人気スポットである。
「嫌でしたか?
「いや、お前の行きたいとこならどこでも良かったし別にいいけどな。長島スパーランドとかお前が小さかった時以来だわ」
「ほんと数十年ぶりとかですよね」
淡い赤の光に包まれたトンネルをゆっくり手を繋ぎながら歩く。
その明るさと美しさにすごいなあと思ってしまう。
「これ全体で何キロワットぐらいなんでしょうねえ」
「急に現実に引き戻されたな」
「あ、いえ、ちょっと前に100万ドルの夜景の100万ドルには意味があるって話を聞かされてつい思い出しちゃって」
「あー、昭和30年代の神戸の一か月の電気代が100万ドルだったから神戸の夜景を100万ドルの夜景と名付けたって話?」
「それです。もしイルミネーションの電気代が100万ドルならこれも100万ドルの夜景だなあって」
「100万ドルはだいたい一億一千万だから(※現在のレートです)それよりは安いだろ、毎日電気代にそんなかけてたらいくら人呼んでも赤字だ」
「でしょうね」
光のトンネルを抜けると、一面に青い光が広がる。
青い海原を思い出させる光の花畑とそこに流れ込む巨大な滝のようなイルミネーションは、「でかいな」とトヨタさんが感嘆の言葉を漏らすほどだ。
やがて滝のイルミネーションに大きな鯨の姿が浮かび、鯨が大きくダイブする。
その画像に周囲からも感嘆の息が漏れ聞こえた。
「滝のイルミネーションを画面として使ってんのか」
「みたいですね」
やがて滝のイルミネーションが青い海から草原のような緑へと切り替わる。
滝のイルミネーションも色が切り替わり、まるでここだけが春の花畑のような色彩に変わっていく。
「名古屋、」
「はい?」
「今年もお疲れさん。いつもありがとうな」
「……どうしたんですかいきなり」
「いや、なんかそう言う気分だったんだよ」

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