リクを募集したらとよなごと牛久色麻の続きを求められたので書きました。
・牛久色麻
朝目が覚めると隣には健やかな顔で眠る恋人がいる。
肌寒いクリスマスの朝、まだ互いの身体に残る愛し合った痕跡がどこか気恥ずかしい気持ちにさせる。
思ったよりも体が綺麗なのは後片付けをしておいてくれたお陰だろうか。
(背中のひっかき傷、すごい酷くなってる)
牛久の背中についたひっかき傷が生々しく映る。
爪を切り忘れたせいでいつもよりひっかき傷が深くなってしまっていて、申し訳ない気持ちになってきた。
近くにあったシャツを羽織って薬箱をあけて、ひっかき傷に効く軟膏を取り出して、それを大きな背中に塗り広げていく。
「……しかま?」
寝起きのまだ少し呂律の周り切っていない口ぶりで俺の名前を呼ぶ。
こういうところはちょっと可愛いなあ、なんて思うけど本人には秘密にしておく。
「あ、おはよう。」
「いまなにしてたんだ?」
「牛久の背中のひっかき傷すごかったから軟膏を塗ってただけ、朝ごはんどうしようか?」
「そうだなあ、きのうのケーキの残りでいいんじゃないか?」
「じゃあそうするよ」
そう言ってふたりでゆっくり食卓へと歩き出す。
(最高のクリスマスプレゼント、貰っちゃったなあ)
・とよなご
(……頑張りすぎた)
いつもなら使わない筋肉が痛い。主に腰回りの。
兄貴(※豊田織機)のリア充弟マジ滅びろの呪いやその他兄弟姉妹の嫉妬の目をガン無視して名古屋となばなの里でイルミネーション眺めてたら、『あの、ホテルとってあるんです。一緒に泊まっていきませんか』とか言ってくるものだから頑張りすぎたのだ。さすが俺の名古屋ほんとできた嫁だ。
そして俺の横で健やかに眠る名古屋ちょうかわいい。最高に可愛い。
少し跡をつけすぎた気はするがどうせ昨晩は八幡も釜石に同じことしてんだろうし気にするまい。うん。
LINEの着信音が響いてきたのでとりあえず起動させてみる。
『日産:三菱さんいつ帰ります?』
『豊田:残念、誤爆だ』
『日産:見なかったことにしといてくれ』
『豊田:ちなみに俺は名古屋とリア充してきましたうへぺろ』
昨日の夜のうちに撮っておいたイルミネーションと名古屋の写真も一緒に送っておいた。
なんでかって?初恋泥棒への嫌がらせである。お前に奪われた俺の初恋を返せ。
『日産:イルミネーション綺麗だな』
『豊田:そっちかよ!!!!!!!!撮影地は三重のなばなの里な!!!!!!!』
『ダイハツ:朝からグループラインで惚気んなピコピコうるせぇ!!!!!!!!!』
『日産:すいませんでした』
『豊田:誤爆したの日産なんで俺じゃないです』
『ダイハツ:日産はありあけハーバー、トヨタは安永餅で手を打とう』
『スズキ:ついでにラインの着信音で叩き起こされた私にも』
『ホンダ:俺も安永餅欲しい~( `ー´)ノ』
『豊田:ホンダは自前で買え、とりあえずダイハツさんには送ります』
『日産:年明けの会議でありあけハーバー持ってきます』
『ダイハツ:それでよかろう』
「……朝から何してるんですか」
横から不意にすねたような声がする。
「ああ悪い悪い、ちょっとな」
既読だけつけて携帯の電源を落とす。
帰りに安永餅買ってこう、なんか食いたくなってきた。
「まだ、甘え足りないのに」
そんな事をつぶやく名古屋以上に大切にすべきものなど、他にはないのだから。