とえさん(@totoe_toe )宅の鳥取さんと三国のお話。季節外れの夏のお話。
靴と靴下を脱いで砂の上を歩く。
砂丘の砂の感触を確かめるようにゆったりとした歩幅の客人を、鳥取は不思議そうに眺めていた。
「楽しいですか？」
「おう、東尋坊に砂は無いからなあ」
同じ日本海であっても日本一の砂場を自称する鳥取砂丘と自殺の名所という不名誉な称号を持つ東尋坊は景色が全く違う。
地質学の知識でもあれば何故違うのかを説明できるのだろうが、浅学非才の身にはそんなことも出来やしない。
「東尋坊って岩場ですもんね」
「おう、今度来てくれれば越前カニでも茹でてもてなすぞ？」
「……別に松葉ガニあるんでいいです」
「じゃあ、越前そば。大根おろしをたっぷり乗せてな」
「蕎麦でお願いします」
「おう、冬なら丁稚羊羹もつけるぞ」
砂の音と海の音、そして他愛もない会話だけが海岸を包んでいる。
そんな何てことない夏の終わりのこと。
