時々、赤く燃える空の夢を見る。
戦闘機の飛び交う空と、赤い炎に包まれた町。
恐怖とそれでも戦わねばならないという使命感のはざまで、ボロボロの身体になりながら逃げ惑う夢だ。
にいさん、にいさん、と誰かを呼びながら赤く燃える町を逃げ惑う。
何処に兄さんがいるのか。どこに逃げて、どうしたらいいのか。分からない事だらけで私は必死に町を彷徨っている。
「……ゆめ」
目が覚めて自分に言い聞かせるようにそう呟く。
火傷したみたいに熱くなった身体を冷ましたくて、風呂場でパジャマごとシャワーを浴びる。
真冬の凍てつきそうなほどに冷たい水が妙にここちよくて全身でその水をかぶり続ける。
(あれは、何の夢なのだろう)
業火の夢を見るたびにふとそんなことを思うけれど、一度も答えが出たことは無かった。
蛇口を止めてびしょ濡れになったパジャマを脱ぐ。
私の身体はいつも通り、火傷のない綺麗な手足のままだった。
光ちゃんのある朝の話。