(……2月なのに雪がない)
駅から一歩出てみれば雪のない晴天の空。
太平洋側の雪のない冬は分かっていてもいまだ慣れることがない。
「敦賀!ひさしぶりー」
「水戸さん、久しぶりです」
小柄な彼がぴょこんと立った逆毛を揺らしながら駆け寄ってくる。
地元から持ってきた手土産のおぼろ昆布を手渡すと「……地味だね」と言われた。しかし敦賀の誇る名産品であるし美味しいので我慢して頂きたい。
(それにしても相変わらず可愛い人だよなあ)
小柄な体躯も、彼の喜怒哀楽のはっきりした表情も、良くも悪くも隠さない言葉たちも。
子どもの心のままで育って来たようなところを俺は可愛いと思っている。
「今日はうちで一泊してくんでしょ?」
「梅酒、期待してますよ」
「もちろん」
走り出さないようにその手を掴んで歩きだす。
その人から、淡い梅の香りがした。
水戸敦賀習作。付き合ってません。