そもそものきっかけは、勝山からの連絡だった。
『ねえおのくん、そば粉5キロも貰ったんだけど一緒に食べない?』
『うちも大根あるから、嶺北で集まっておろしそば食べればいいんじゃない?』
『それだ』
そんな訳で、福井さんに連絡を入れて嶺北の暇な奴らで集まってそばを食べる事になったのである……。
秋は食のクオリティ・シーズンですよ!
「せっかくだからキノコの天ぷらでも作ろうかと思って準備したんだけどどう?」
久し振りにお邪魔した福井さんちの台所には、大きなざる一杯のキノコが盛られている。
おろしそばに天ぷらと言うのも悪くはないなと考えながら「いいと思いますよ」と返すと「ならよかった」と呟く。
「おっじゃましまーす」
「ああ、南越前か。越前町は?」
「なんか焼き物のイベント準備あるから無理だって。あとこれうちに余ってた秋ナスなんですけど要ります?」
「秋ナスかあ、焼いて食べようかな」
「あ、じゃあ福井さん七輪借りて良いですか?」
「外の物置小屋にあるから自由に使って」
「はーい」
そんな調子で全員が家に余っていたものを持ち寄って来るので、1時間もしたら食卓は大盛りになっていた。
武生と越前市の持って来た食用菊の酢の物、あわらと金津が持って来たブランドトマトのチーズ焼き、丸岡の持って来た厚揚げステーキ、春江の持ってきたきゅうりと茄子の糠漬け、池田の持って来たイノシシ肉をにんにく醤油で漬けたもの、そして現在湯がかれている蕎麦である。
「ねえおのくん、」
「なに?」
「食卓賑やか過ぎない?」
「秋だから色々貰うんでしょ、勝山は黙って大根おろしなよ」
「うん」
僕は黙々と大量のそばを湯がき、勝山は大根を下ろし、福井さんはキノコを天ぷらにしていく。
庭からは越前町の焼く秋ナスの匂い、食卓からはホットプレートで焼かれる厚揚げステーキとイノシシ肉の匂いが漂ってくる。
蕎麦を冷水で締めながら僕は考える。
(……これ、遅れてくるっていう鯖江もお土産持ってきたら全員明日胃もたれなのでは?)
そんな直観に襲われつつどんぶりに蕎麦と大根おろしをどさどさと乗せていくと、玄関が開いた。鯖江だ。
「遅刻してごめんねー、お土産にヤマ〇ツのスフレロール持って来たよー!」
「「「「「「嘘だろ(でしょ)?!」」」」」」
秋だから色々美味しいものあるよねっていう話。