忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

年末二人ぼっち

今年は八幡と一緒に年越しをすることになった。
単純にあいつがしつこく呼んできたからであって年明けの入れ替え戦に向けて気の立っているシーウェイブスが我が子ながら怖いからではない、決して。
「年越しそば出来ましたよー」
「おう、ありがとうな」
丼には具材たっぷりの年越しそばにみかん。
ワンカップを片手に蕎麦を啜り、紅白なんぞつけながらこたつにくるまる様子はいかにも日本の年越しだ。
隣に腰を下ろした八幡の様子を見ても、こう言う年越は悪くないように思える。
「今年最後のスペースワールドも二人で行けましたし、もう心残りはありませんよ」
「ほんとうに?今は気分がええからちょっとぐらいなら無茶ぶり聞いてやるぞ?」





「……じゃあ、年越しの瞬間にキスしてくれます?」

そのぐらいなら、聞いてやってもいい。


八幡釜石の年越し。

拍手

PR

彼女と彼女のはなし

「福山ー!」
それはそれはハイテンションで駆け寄ってきた水島を反射的に抱き留める。
きょうもふかふかもちもちー!などと言いながら私の身体に顔を埋めるのはもういつものとこで、横にいた職員さんも笑いしか出てこない様子だった。同情します。
「水島、今日は何の要件?」
「ちょっと必要に駆られてこっち来ただけ、そのついでに福山成分の補給を」
どうぞお気になさらずと職員さんにアイコンタクトを送ると、じゃあお願いしますというように一礼して別場所に向かって行った。
明るさを忘れないその気質は美点ではあるけれど同時にやかましくもある。
(……そう言えば千葉さんも割とこんな感じだよね)
本人はあまり似ていないと主張する兄貴分のことをふと思い出してしまう。
「成分補給したら仕事に戻りなさいよ?」
「えー」
「……今夜、煮込みハンバーグにしてあげるから」
「煮込みハンバーグ!?ならやる!福山のふかふかもちもちとハンバーグのために頑張る!」
でも、この賑やかしくてコロコロ変わる彼女が好きで一緒になったんだからしょうがない。
職員さんが迎えに来て「じゃあ今夜そっち行くから!じゃあね!」と言って軽やかに自分のところへ帰っていく。
私も仕事に戻らねば、と思っていると職員に声をかけられた。
「……福山さん上機嫌ですね」
「今日は可愛いあの子が夕食を食べに来るからね」



福山と水島。
そう言えばまだこの二人書いていなかったよなあと言う事に気付いたので。

拍手

夜雨は僕らをダメにする

90年代の和歌山×直江津。



拍手

ジューンブライドの海で

「そう言えばさ、明日大安吉日なんだね」
晩酌のさなかに和歌山が突然思い出したようにそんなことを言う。
出会った頃からこのマイペースさはさっぱり変わる気配がなく、むしろ悪化している気がする。
まあどこぞの官営様方や神戸のお嬢様やらに振り回されていればそれぐらい肝が太くないとやっていられないという事なのかもしれないが、一緒に暮らす身としては正直めんどくさい。
「そうなのか」
「うん、ほら」
携帯のカレンダーアプリをこっちに見せてくると、確かに大安吉日の文字がくっきりと描かれている。
なるほど土曜日の大安吉日ともなればきっと明日はどこの式場も混んでるだろうとぼんやり考える。
「で、思ったんだけどさ」
和歌山が酷く楽しそうな顔をして切り出してくる。恐ろしく嫌な予感しかしてこないのを飲み込んでとりあえずワンカップの酒を飲みこんだ。

「結婚式、やろう」

「……はい?」
真剣に意味が分からない。
「結婚式って何だよ」
「あれだよ、こう、タキシードとかドレスとか着てみんなの前で誓うの」
「いやそれは分かるけどよ」
「記念写真でいいから!やろう!」
「衣装とかどうすんだよ」
「此花のとこ行けばそれっぽい袴とかあるし!写真撮るだけだから!」
「いやいやいや今からあの人んところ行くのかよ」
「ちょうどお酒も切れたし!行こう!」

大阪市内にある此花の家は慎ましやかな古い独身寮である。
此花と西宮(いちおう競合他社なのにこの二人は妙に仲が良い)は突然の来訪者に呆れ半分の視線を向けてきた。
「……という訳で、袴貸して!」
「急だな!」
そうは言いながらもちょっと待ってろと言いながらタンスを漁り始めた此花はつくづく俺たちに甘い。
2人で夕飯を食べていたという西宮もあの赤い瞳を細めて困ったように歪ませるばかりで、なんだか申し訳ない気分だ。
「結婚写真撮るなんて粋なことするんだね」
西宮が俺にそう告げる。
「突然すぎて困るのはこっちですけどね」
「でも、お互い元気だからできることだよ」
「ま、そうですけどね。元気過ぎるのも困ったもんですよ」
苦笑いをこぼしながら雑談なんかしていると、此花がふらっと戻ってきた。
「とりあえず袴と燕尾服あったぞ、サイズだけ確認しといてくれ」
「どうも」
​​​​​​​「海南は気にすんな、後で写真頼むわ」
「分かりました」

****

翌日。
梅雨時の晴れ間に恵まれたにもかかわらず市内の砂浜は人が少ない。
「……写真撮るって、誰がシャッター切るんだよ」
「考えてなかった!まあでも何とかなるでしょ」
やはりこの男はマイペースである。
三脚片手にあれやこれやと調整を始めた和歌山に対して不思議と苦情は湧かなかった。
こんな奴とずっと一緒にいたおかげで苦労も多かったけれど退屈もしなかった。
決していい関係の始まり方でもなかったけれど、これからもきっとこいつがいれば楽しく生きていけるだろう。
ばたばたばたとこちらに戻って来た和歌山が、俺にブーケを渡してくる。
「これからも、ずっとよろしくね」
「……おう」
そうして、シャッターの切られる音がした。






和歌山海南のジューンブライド。

拍手

短いお話3つ

八幡釜石の短いお話。

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ