下丸子の本社から町田に帰る前にと寄り道した砧グラウンドは思ったより静かだった。
「やっぱ日本代表不在チームは静かですね」
「嫌味か」
後ろからぬっと出て来てそう言い放ったのは僕の愛する先輩であった。
「違いますよ、最近はご新規さんが増えてグラウンドも賑やかになったものですからちょっと疲れてただけです」
にわかファンと呼ばれるファンの急増は僕らを囲む環境を大きく変え、その対応にスタッフのみならず選手たちも日々追われている。
その上、変則日程に新型コロナの感染拡大に新リーグ発足に向けた動きなど日々目まぐるしく動く状況に少し疲れていたのかもしれない。
「何方にせよ其れは嫌味ではないか?」
「違いますってば」
今日のブラックラムズ先輩はなんだか不機嫌だ。
ベンチに腰を下ろした僕らは練習に励む人たちを見つめながら、冬晴れの空気を吸い込んだ。
「……久しぶりの個人的な逢瀬かと思えばその様なことを言われるとは思わなかっただけだ」
ああやっぱりちょっと酷いことを言ってしまったみたいだ。
「酷いこと言ったなら謝ります」
「本心から疲れていたのだろう?怒り様がないだろう」
目の下に隈が浮き出してるぞとその人は呆れ気味に言う。
ああ確かに、このところずっとバタバタしていた自覚はある。
「まあ、そうかも……ですね」
「近くにイーグルスの好みそうな良いカフェが有る、落ち着いたら少し茶でも飲んで行こう」
「練習まだ終わってないのにですか?」
「我のところは馴染みの人しか来ないからな、我不在とて問題は起きない。ついでに町田の事務所まで送って行く」
言葉と眼差しからこの人の優しさが静かに染みわたる。
ああやっぱ僕、疲れてるのかな。
ちょっと泣きそうになりながら「ごちそうになってもいいですか」と僕が聞くと「割り勘だ」と僕の好きな人は笑うのだった。
イーグルスとブラックラムズ。
最近ラグビー組更新サボり気味ですいません。
今年こそカメラダービー見ようと思ってたのにチケット取り損ねた/(^o^)\