「最近さあ、ちょっとよく遊んでる子がいるんだよ」
ビールを飲みながら尼崎がそんなことを言う。
居酒屋やバーで酒を飲みながら可愛い女の子を眺めるのが尼崎の趣味なことは知ってるが、仲良くしてるしてる人がいるのははじめて聞いた。
「んでさぁ、その子がめちゃくちゃかわいーの。んで最近なんかいい雰囲気だしこのままお付き合いとかしたいなーって思うんだけどどう思う?」
「……人間相手はお勧めしないぞ」
空の缶をゴミ箱に投げ込むとスコンとゴミ箱に入って行った。よし、まだ酔ってないな。
「人は私らよりも早く老いてくし、簡単に死ぬぞ」
「簡単に死ぬのは俺らも同じでしょ」
尼崎が不満げにそんなことを言う。
財閥解体で兄弟たちが去って行った時も、葺合がいなくなった時も、こいつは知ってるからそう思うんだろう。
だけど人間の命の儚さはそれとは違う部類のモノじゃないだろうか。
私達の儚さが人間に捨てられた犬の儚さであるならば、彼らの儚さは季節が終われば死んでいく虫たちの儚さだ。
「それともあの押し入れの本箱に仕舞ってある写真の人との関係に基づく実体験?」
思わず身体の動きが止まる。
「おま、開けたのか、あれ」
「だって此花って本全部押し入れに仕舞ってるから本借りようと思うと押し入れ漁るしかないじゃん。んで一つっきりの本箱、そりゃ開けるでしょ」
開けるでしょ、じゃねえぞ。
阪神淡路の後本棚は倒れるからと思って押し入れ改造して本収納してたのが仇になりやがった。クソ。
「で、あのお兄さんとの悲恋体験で俺のこと止めるの?」
「止める理由はノーコメント。でもほんと人間と付き合うのはやめとけよ。どうせ老いてかれるのはこっちなんだからな」
「んー、考えとく。でもたぶん会ったら全部吹きとんじゃうかも♡」
尼崎が何も考えてない顔でケロリと言い放つので、思い切り頭をチョップした。
此花と尼崎。
二人の恋愛についてはそのうち書きます(設定はあるんだ設定は)