「この度は本当にご迷惑をおかけしました」
玄関を開けると、レッドドルフィンズが深々と頭を下げて手土産のお菓子を差し出してくる。
ご迷惑の心当たりはひとつだけあるがもう終わったことのつもりだった。
「……あの件ならもう協会から審判も下りた、今更詫びられても困る」
「そうかもしれませんが、僕としてはこうしてちゃんとダイナボアーズさんに詫びを入れない事には気が晴れなくて」
その一言で心にかすかな靄が浮かんでくる。
少し意地の悪いことを言って困らせてやろうかというささやかな復讐心である。
「つまりそれは、レッドドルフィンズが自分のために頭を下げに来たということだろう?」
あの件ではこちらも迷惑を被ったし、D2の面々も同様に迷惑を被ったはずだ。
彼らにも詫びを入れるのが筋じゃないのだろうか?
「……そうかもしれません。ですが!」
それまで頭を下げていたレッドドルフィンズが体を起こし、目を見てこう告げた。
「新選組の誠の文字を一度でも背負ったものとして、正しくありたいと思ったんです」
以前見た赤に新選組をイメージしたダンダラ模様のデザインのシャツを思い出した。
「俺に詫びを入れることがその第一歩ということか」
「はい、D2メンバーや関係者の皆さんにもちゃんとお詫びに行くつもりです」
「なら俺に構わず他の者にも詫びに行くべきじゃないのか?」
レッドドルフィンズは虚を突かれたように一瞬ぽかんとしてから「ありがとうございます」と頭を下げた。
お菓子を受け取るとレッドドルフィンズは再び会釈をして去っていく。
(……ちゃんと更生してくれるといいんだがな)
人生にはやり直しが効くが、やり直しのチャンスは決して多くない。
その少ないチャンスをしっかりと正しくまっすぐに生きていくことが彼の新しい始まりなのだから。
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ダイナボアーズとレッドドルフィンズ。
今日から活動再開らしいので、ほんと次こそはしっかりしてくれよ(懇願)