夜勤明けの朝、一歩外に出ると思ったよりも温かい日差しが空から降ってきた。
ちょっと歩いてみれば遠くに梅の花の匂い。風は冷たいが日差しが気持ちいい。
「シーウェイブスか」
「お疲れ様です」
買い物に来ていたシーウェイブスとディーロックスがひょっこりと向こうからやってきて、その服装がすっかり春の装いだった。
荷物と一緒に花束を手にしていたので「そういやもう11日か」とつぶやく。
「そうですよ」
「夜勤明けは感覚狂っていかんな」
そう呟きながら「この後はどこに?」聞くと「買い物をしてからふたりで鵜住居に」と云う。
たぶんトモスのほうに行くのだろう。
「シーウェイブス、」
「はい」
視線がかち合うと言おうとした言葉がうまく出て来なくなる。
だから違う言葉を口にした。
「……明日の試合楽しみにしてるからな」
もう12年だ、あの日のことはあいつなりにもう折り合いはつけてるはずなのだ。
だから明日のことを口にしてしまう。
全部まっさらに流されても人は作り直せる、長い冬が終われば春が来る。
「頑張ります」
そう言って二人は歩き出す。
まだ冷たい晩冬の風がうんと二人の背中を押していた。
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釜石とシーウェイブス、とちょこっとディーロックス